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「プライマリーバランス黒字化」ついに国の白書から消えた……「緊縮財政」は今後変わるのか

予算編成を担う財務省に歳出圧力が高まる=東京都千代田区で2016年6月7日、井出晋平撮影
予算編成を担う財務省に歳出圧力が高まる=東京都千代田区で2016年6月7日、井出晋平撮影

内閣府は11月6日、2020年度の経済財政白書を公表した。

今回の白書で目を引くのは、歳入(公債発行除く)と歳出(公債費除く)の差である基礎的財政収支(プライマリーバランス=PB)に関する記述だ。

新型コロナウイルス対策で巨額の財政出動を余儀なくされたことを背景に、18、19年度白書にあった「25年度に国・地方のPB黒字化を目指す」との記述がなくなっている。

政府のPB黒字化目標は、15年策定の経済・財政再生計画で「20年度」の達成を掲げていた。

しかし、日本経済の成長率が低下したことなどで困難になり、18年策定の新経済・財政再生計画で「25年度」へと目標達成時期を先送りしていた。

その後、コロナ禍によって、政府は国民1人当たり一律10万円を給付する「特別定額給付金」など、財政負担を伴う大型の対策を次々と打ち出すことになり、目算が大きく狂った。

今回の白書ではコロナ対応による政府債務残高への影響を分析しており、20年度の国・地方の債務残高対GDP(国内総生産)比は前年度に比べ23・2ポイント悪化する見通しと、リーマン・ショック後の09年度(14・8ポイント悪化)を大きく上回った(図)。

25年度の達成困難

内閣府はすでに今年7月、「中長期の経済財政に関する試算」で、実質2%、名目3%という高めのGDP成長率を前提としたシナリオでも、25年度のPBが7・3兆円程度の赤字(対GDP比でマイナス1・1%程度)となる見通しを示し、PB目標の達成は絶望的となっていた。

政府は来夏、新経済・財政再生計画の更新を予定しており、PB目標の見直しが不可避となる中、今回の白書でも記述を控えたとみられる。

内閣府は今年度、実質マイナス4・5%程度、名目マイナス4・1%程度と、統計がさかのぼれる1955年度以降で最悪の成長を見込んでいる。

白書では「自律的な成長経路への回帰を急ぐことは、財政健全化を図る前提」と指摘。

臨時的対応の直接給付から民需を引き出す「賢い支出」へと切り替えることを求め、働き方改革やIT投資によって生産性を引き上げることが重要としている。

ただ、今回の白書は副題で「コロナ危機 日本経済変革のラストチャンス」とうたいながら、どのような意味で「ラストチャンス」なのかは具体的に示していない。

また、英国など欧州では新型コロナが再び感染拡大し、外出制限を伴うロックダウン(都市封鎖)が事実上再開されている。

経済活動が日本でも今後、さらに冷え込めば、PB黒字化を含め日本経済回復に向けたシナリオも一段の修正が必要になる。

経済財政白書は例年7~8月に公表されるが、今年度は新型コロナの影響が大きい4~6月期GDPの値を反映させるため、公表を遅らせていた。

(種市房子・編集部)

(本誌初出 2020年度「経済財政白書」 基礎的財政収支の黒字化 コロナ対応で消えた記述=種市房子 20201117)

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