教養・歴史書評

実は「平安」でなかった平安時代=今谷 明

古記録から描く庶民の生活

 摂関政治や女房文学など、華美で温和なイメージがある平安時代だが、実は物騒な時代でもあった。花山上皇が摂関の一族から弓を射かけられ、宮廷内では公卿(くぎょう)が殴り合いのけんかをしたなどは一例である。

 盗賊の横行も甚だしかった。永久2(1114)年には丹波(たんば)、但馬(たじま)など山陰道出身の盗賊30人余りが京中を荒らし回り、大枝山(おおえやま)で盗品を山分けしているのが検非違使(けびいし)に摘発された。これを記録したのは検非違使の別当(今の警視総監に相当)だった藤原宗忠の日記『中右記(ちゅうゆうき)』である。大枝山の鬼(酒呑童子(しゅてんどうじ))退治の伝説はこれをもとに生まれたのではないか。

 なにしろ武士・武家が発生した時代なのだから、治安悪化は当然だが、平安時代という呼称と史実との落差が大きすぎるのだ。

残り606文字(全文979文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月9日号

EV失速の真相16 EV販売は企業ごとに明暗 利益を出せるのは3社程度■野辺継男20 高成長テスラに変調 HV好調のトヨタ株 5年ぶり時価総額逆転が視野に■遠藤功治22 最高益の真実 トヨタ、長期的に避けられない構造転換■中西孝樹25 中国市場 航続距離、コスト、充電性能 止まらない中国車の進化■湯 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事