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経済・企業 特集

QRコード決済 参入企業続出で大混戦=鈴木淳也 キャッシュレスの覇者 

スマホ決済(QRコード決済)の主要事業者
スマホ決済(QRコード決済)の主要事業者

「キャッシュレス」を錦の御旗(みはた)に、スマートフォンを使った決済サービス、通称「スマホ決済」が続々と誕生している。

 スマホ決済にはさまざまな方式があるが、その中でいま最も注目を集めているのが二次元コード(QRコード)決済で、店舗内に設置されたタブレットのカメラで、客のスマホ画面に表示したQRコードまたはバーコードを読み取って決済するというもの。従来のクレジットカードや電子マネーのような専用の読み取り端末や高価なPOS(販売時点情報管理)を必要としない。また、店舗のレジ横にQRコードを印字した紙を掲示し、利用者がスマホのカメラで読み取る方式ならば、設備そのものを必要としない。

 QRコード決済で先行する中国では2013年の規制緩和を機にインターネット系の新興事業者が次々と店舗決済分野に進出し、大規模店舗から街の露店まで都市圏を中心に瞬く間に利用層を拡大した。

アマゾンペイ。上の専用端末で客のスマホに表示されるQRコードを読み取って決済する
アマゾンペイ。上の専用端末で客のスマホに表示されるQRコードを読み取って決済する

 日本でこの分野に最初に進出したのは16年5月にサービス開始したOrigami(オリガミ、東京都港区)で、以後、ネット事業者、携帯キャリア、銀行、そして流通業者などが進出し、大混戦の様相を呈している(図)。

 今のところ、QRコード決済の主役を張るのは、ネット事業者と携帯キャリア事業者だ。既存事業を通じて決済に必要なクレジットカードなどの顧客情報をすでに把握しており、顧客誘導が容易という強みがある。

 これに顧客数で拮抗(きっこう)するのがメガバンクだ。現時点では3社とも決済サービスには参入していないものの、顧客サービス拡大や新たな収益源にすべく準備を進めている。3社でQRコードの読み取り・表示方式を共通化したのも、加盟店獲得で巻き返しを図るための対策と見られる。

 一方、ゆうちょ銀行と地銀の戦略はメガとは異なる。特徴的なのが「銀行ペイ」と呼ばれるグループで、決済インフラを提供するGMOペイメントゲートウェイ(東京都渋谷区)を中心に、地銀連合を構築している。銀行ペイのシステムを通じて地銀同士を接続することで、参加行同士で決済インフラを相互利用できるようにしている。

 また、現時点では具体的な姿は見えていないものの、セブン&アイ・ホールディングス、イオン、コンビニ大手のローソンなど流通大手も、独自の決済サービス参入を計画している。ポイントプログラムを通じた利用者の囲い込みを主眼とした決済サービスになりそうだ。

「送金」や「割り勘」機能に軸足を置く事業者もいる。SNS大手、LINE(ライン)のラインペイは、コミュニケーション機能の一つとして送金機能を重視している。また最近ではKyash(キャッシュ、東京都港区)、pring(プリン、東京都港区)、paymo(ペイモ)を運営するAnyPay(エニーペイ、東京都港区)といった新興勢力が登場している。個人間送金サービスを無料で提供する一方で、店舗決済から手数料を徴収するビジネスモデルを採用している。手数料を引き下げて利用や導入を促進する戦略で大手に対抗しようとしている。

勝負はこの1、2年

 一般に、決済は手数料商売といわれる。カード会社や、中間処理業者など複数の業者で1決済当たり数%の加盟店手数料を分配することでビジネスが成り立っている。

 一方、新興系事業者やネット事業者のビジネスモデルはこれとは異なる。加盟店手数料を限りなく0%に近い水準まで落とすことで、既存事業者との差別化を図っているのだ。独自の決済ネットワークを構築して手数料を抑えたり、日々の決済で得られるマーケティング情報を利用して新しいビジネスにしたり、他の主要事業に顧客を誘導したりと、加盟店手数料から直接稼ぐことを前提にしていない。

 競合ひしめく業界だが、「1、2年で雌雄は決する」(楽天ペイの小林重信氏)と考える関係者は多い。そのため、頭一つ抜け出すために加盟店開拓を本格化する動きが出てきている。ラインは加盟店100万店開拓を表明し、加盟店専用決済端末を配布するほか、3年間の決済手数料無料を打ち出すなど、体力勝負で競合の脱落を待つ戦略を仕掛けている。

 年内のサービス開始を目指すソフトバンクとヤフーの合弁会社、PayPay(ペイペイ)は、インドのQRコード決済大手Paytm(ペイティーエム)と技術提携したほか、中国のアリペイのユーザーがペイペイ加盟店で決済可能になる仕組みを提供するなど、インバウンド需要を取り込む施策を手がけている。

 QRコード決済が日本で普及するかどうかは、まず決済を受け入れる加盟店をどれだけ集めることができるかが勝負になる。その次の段階の「利用者の増加」も課題は多い。現金に固執する人が多い日本で、現金払いに勝る魅力を提示できるか。各社の提案力が試されている。

(鈴木淳也・ITジャーナリスト)

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