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AI・IoTを駆使して農業を支援 菅谷俊二・オプティム社長

    菅谷俊二・オプティム社長 Photo 中村琢磨:東京都港区の本社で
    菅谷俊二・オプティム社長 Photo 中村琢磨:東京都港区の本社で

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── AI(人工知能)とドローンの技術を活用して農業分野に進出していますね。

    菅谷 当社はAIやIoT(モノのインターネット)の技術を、農業や医療、建設などさまざまな分野に展開しています。農業ではドローンを飛ばして、農場を空から撮影し、その画像をAIで解析して生産に役立てています。

    ── 何が変わるのですか。

    菅谷 無農薬、減農薬の作物を生産できます。今までは、どこに害虫がいるか分からない状況で、農薬を農場全域に散布していました。しかし先進的な農家や無農薬栽培の農家は、農場を見て回って、害虫がいる箇所だけ、ピンセットや農薬を使って駆除しています。それと同じことをAIとドローンで実現するのです。

     害虫がいる葉は、虫食いが発生するので、食われた葉の画像をAIにディープラーニング(深層学習)で学習させると、新しい葉を見て虫が食っているかが分かるようになる。どこの葉が食われているかを検知し、特定した箇所に農薬を散布して害虫を駆除します。

    ── 高度な技術が要求されそうですね。

    菅谷 単なる画像解析だけではなく、近赤外線を用いた解析を行ったり、生育温度からも類推したりしています。また、解析についても、いろんなパターンのAIを組み合わせています。

    ── 実際の効果は?

    菅谷 農薬の使用量を9割以上削減できました。消費者にも無農薬・減農薬という価値を訴えることができ、製品をブランディングすることが可能になります。

    ── それが昨年11月に発売した「スマート米」なんですね。佐賀県産さがびよりや青森県産まっしぐらなど4品種を扱っていますが、価格は高そうです。

    菅谷 他のブランド化された作物と同様に、通常のコメの3倍の価格で販売しています。新しい技術を導入しても、生産者の所得が上がらなければ意味がありません。そこで、当社はこの技術を無償で生産者に提供しています。そして、生産者がこの技術を使って生産した作物全量を、われわれが市場価格で買い取り、3倍の価格で販売する。そして売れた分の利益からライセンス料を当社がもらい、さらに残りを生産者に還元しています。今年2月からは「スマート玄米」の販売も始めました。

    ── 現在のメインの事業は。

    菅谷 当社は過去、インターネットのルーター(通信機器)の初期設定を自動化するビジネスで大きく成長しました。そして法人向けパソコン管理のサポート事業を展開した際、スマートフォンやタブレットが一気に普及し始めたので、法人向けのモバイル端末管理事業に経営資源を集中し、国内トップシェアを獲得しています。この事業が現在収益の柱で、ここで上げた利益をAIやIoT分野に積極的に投資しています。

    ── 強みは何ですか。

    菅谷 当社は「オプティム クラウド IoT OS」というプラットフォームを展開しています。このプラットフォーム上で、IoT端末の管理やデータの分析、AIの活用、クラウドサービスとの連携などを行い、さまざまなサービスを提供します。他社のAIも選択できるなどの柔軟性が強みです。

     例えばコマツは、クラウド IoT OSをベースに「LANDLOG」という建設現場用プラットフォームを作り、IoT活用を進めています。建設現場では、コマツ以外の建機も使われ、また複数の会社から作業員が派遣され、多岐にわたる仕事上のデータの管理が必要となります。その一括管理がクラウド IoT OSでは容易なので、LANDLOGにこの技術が使われています。

    ── 小売店向けには無人AI店舗の実証実験を進めています。

    菅谷 店内のカメラの画像をAIで解析して、店内の状況や来店者の行動を分析します。今はさらに発展させたものをCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)グループの家電店「蔦屋家電」に導入しています。東京・二子玉川の蔦屋家電の店内では、製品のそばにタブレットを置いておき、製品を見た人の属性、製品を見た時間や、何と比べていたかなどをAIが解析します。

     まだ構想段階ですが、例えば、書店に置くこともできます。書棚の前にどんな人が立って、何を買ったかを知りたくないですか。

    ── それはぜひ、知りたいですね。

    菅谷 この技術で、それができるようになりますし、商品の作り方が変わると思います。小売業は今、ネット通販に押されっぱなしですが、リアルの店舗にこうした端末を置いておけば、ネットより多くの情報が得られます。リアルのデータをAIでデジタル化できれば、これからリアルの逆襲が始まります。当社はその手伝いをしたいと思います。

    (構成=村田晋一郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A やりたいことと会社の規模に隔たりがあり、葛藤していました。

    Q 「私を変えた本」は

    A アルビン・トフラーの『パワーシフト』、司馬遼太郎の『国盗り物語』、かわぐちかいじの『沈黙の艦隊』です。それぞれ物の考え方を変えるきっかけになりました。

    Q 休日の過ごし方

    A 中学で水泳部だったこともあり、ジムで泳いでいます。


     ■人物略歴

    すがや・しゅんじ

     1976年生まれ、兵庫県立星陵高校卒業、佐賀大学農学部卒業。大学在学中の2000年にオプティムを創業し、代表取締役社長に就任。現在に至る。15年より佐賀大学農学部招聘教授。兵庫県出身、42歳。


    事業内容:IoTプラットフォームサービス、リモートマネジメントサービスなど

    本店所在地:佐賀県佐賀市

    本社所在地:東京都港区

    設立:2000年6月

    資本金:4億4300万円(2019年4月1日現在)

    従業員数:229人(19年4月1日現在)

    業績(19年3月期)

     売上高:54億6800万円

     営業利益:9600万円

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