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じじい特権を乱用し、偏見を活用しよう=小林よしのり(漫画家)

撮影 中村琢磨
撮影 中村琢磨

 川崎市の20人殺傷事件を起こした51歳の容疑者は中学卒業以降30年以上、社会とのつながりを拒絶して生きていた。

 そんな孤独と絶望が「拡大自殺」を招くというが、今や100万人超という引きこもりがいるらしい。

 子供を巻き添えにするのは許せないが「死ぬなら一人で死ね」という非難は、絶望している者に、社会から見放されたという被害者意識を刺激し、新たな事件を誘発しかねない。

 本来なら「共同体の再生」を政治的に目指せと言いたいが、新自由主義の社会ではそんな意見は観念論としか思われず、「砂粒の個」が漂流する社会が放置されたままになる。

 わしは個人的な戦いを続けるしかないので、じじいになった特権を生かし、子供から若者、ご婦人にまで、なれなれしく話しかけることにしている。

 特にコミュ障(コミュニケーション障害)的な危うい孤独感を漂わせている若者には、「こんなに早くから暑くなりすぎだよね?」と親戚みたいに語りかけてみる。他人と会話なんかしたくないのだろうが、あまりに気楽に声をかけてくるじじいを無視することもできず、つい若者が「うちはもうクーラー入れてます」と応えるから、「えー?ずるいな! そうか、わしもクーラー入れよう!」と、まるで旧知の仲のように大袈裟(おおげさ)に言ってみる。

 じじいゆえに緊張感を緩和する話術で人の絆を意識させる「じじい特権の乱用」である。

 もっともこの作戦は、すでに暴力的な異常性を宿した者には通じない。

 そんな人間がいたら近所で「偏見」を持ってうわさしあい、警察に定期的な訪問を繰り返すよう要請すべきだ。この際、偏見も社会秩序を維持するための大事なツールなのだ。「じじい特権の乱用」と「偏見の活用」という、ささやかな試みを続けるしかあるまい。

(小林よしのり・漫画家)


 本欄は、池谷裕二(脳研究者)、片山杜秀(評論家)、小林よしのり(漫画家)、古賀茂明(元経済産業省官僚)の4氏が交代で執筆します。

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