ビットコイン急騰 1年ぶり100万円回復 米中摩擦で“逃避買い”=高城泰
ビットコインの価格が1年1カ月ぶりに1BTC(BTCはビットコインの単位)=100万円を回復した。2017年12月に史上最高値となる約230万円をつけたビットコインは、バブル崩壊により昨年末には35万円まで暴落、その後も低迷していた。今回の上昇劇の背景にあるのは米中貿易戦争の存在だ。
価格の上昇が始まったのは今年の4月2日で、わずか1日で45万円から58万円へと急騰。この日、中国政府は対米報復関税を発動している。ある国内仮想通貨取引所の関係者は、「人民元の先行きに不安を抱いた中国の富裕層が、資産をビットコインへ逃がす、逃避買いの動きが起きているようだ」と話す。
中国政府は暗号資産(仮想通貨)を通じた資本流出を食い止めるために、暗号資産への規制を強めている。中国内の取引所は閉鎖され、4月には「仮想通貨のマイニング(採掘)禁止を検討」との報道も流れた。しかし、「微信(ウィーチャット)」などのメッセージアプリを使い、個人間取引の形でビットコインを購入できる“抜け道”も存在しているため、「人民元から暗号資産へ」の流れを止めるのは現時点では難しい。
逃避買いの動きは、アルゼンチンやベネズエラ、トルコ、イランなどでも見られる。いずれも今年に入ってハイパーインフレや政情不安、米国との対立や経済制裁などによる通貨不信が高まっている国々だ。
ビットコインが100万円を突破した6月16日、香港では反中国デモの参加者が200万人を超えた。中国化を嫌う香港人が、避難通貨としてビットコインを選ぶ動きもあって、100万円突破を後押ししたようにも見える。
「半減期」で低迷も
上昇劇は続くのか。ポイントは暗号資産への国際的なルール整備だ。マネーロンダリング(資金洗浄)対策を担う国際組織FATF(金融活動作業部会)を中心にグローバルなルール作りは大詰めだ。取引所間送金に銀行並みの基準を求めるなど、既存の取引所や投資家にとっては厳しい内容となる見込みだ。規制が強化されると出来高の落ち込みや価格の低下をもたらす可能性がある。
また、ビットコイン固有の事情で注目されるのが、来年半ばに迎える「半減期」だ。インフレ対策として約4年に1度、マイニング作業をしたマイナー(採掘者)が得られるビットコインの報酬額を半減させていく仕組みだが、過去の経験則では半減期前後に値動きが低迷しやすい傾向がある。
(高城泰・金融ライター)