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玄正慎 Coaido(コエイド)CEO 心停止時にアプリで助けを呼ぶ

    玄正慎 Coaido(コエイド)CEO (撮影=武市公孝)
    玄正慎 Coaido(コエイド)CEO (撮影=武市公孝)

     救急車と同時に救命ボランティアを要請するアプリ「Coaido119」を開発。テクノロジーの力で、救命率の向上を目指す。

    (聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=加藤結花・編集部)

     心停止は何も処置をしなければ、1分ごとに約10%救命率が低下すると言われており、速やかな対応が必要です。しかし、人が突然心停止した場面に遭遇すると多くの人はパニックになりますし、適切な処置ができる人ばかりではありません。そんなときに役に立つのが、救命支援アプリ「Coaido119」です。アプリから119番通報して救急車を要請すると同時に、アプリに登録されている現場近くの救命ボランティアにSOSを通知。アプリには映像配信やチャット機能もあるので、救命ボランティアは迷うことなく現場に向かい、必要な救命活動を迅速に行うことができます。さらに周囲のAED(自動体外式除細動器)設置者に一斉コール。電話で確実に知らせることでAEDが最短距離で現場に運ばれます。

     アプリは8月現在までに、1万4205件ダウンロードされ、救急救命士、看護師、消防職員など1192人が救命ボランティアとしてSOS受信登録。これまで、アプリから160件のSOSと329件の119番が発信されました。

     アプリのプロトタイプを発案したのが2013年のハッカソンです。ハッカソンとは与えられた期間内でアイデアや成果を競い合うソフトウエア開発イベントで、このときのテーマが「20秒で問題解決をする製品をつくる」でした。ハッカソンの初日を終え、乗っていた電車で、立っていた人が急病で突然うずくまってしまうという場面に遭遇しました。僕は何もできなかったんですが、周りの人が介助している様子を見て、こういう大変なときに助けを呼べるサービスがあればいいんじゃないかとひらめきました。

     当初は起業までは考えていませんでしたが、突然の心停止で家族を亡くした人に話を聞く機会があり、何の心の準備もできないまま家族を失った人の悲しみの大きさを知って、これはサービスとして世の中に提供すべきだと強く感じ、14年に会社を作りました。

    簡単に本格的な訓練ができるCPRトレーニングボトル
    簡単に本格的な訓練ができるCPRトレーニングボトル

    IoT拡大が追い風に

     2017年には、突然の心停止時の処置として最も重要な心臓マッサージの訓練をペットボトルで行うことができる「CPR(心肺蘇生)トレーニングボトル」を開発しました。空のペットボトルを使うため、数万円する訓練用の人形と比べ格安で、本格的な訓練が簡単にできるのが特長です。広く普及させるために、一般社団法人ファストエイドを設立。キットの製品化に向け、419万円のクラウドファンディングを達成したので、今後サイトで1個300円で販売する予定です。

     課題は収益化です。一般向けの無料アプリだけでは収益化は難しいので、防災センターや消防といったプロ向けの有償アプリを開発中です。今後は、服や時計として身に着けることができるウエアラブルコンピューター端末と連携した救急救命サービスの提供の事業が大きく育っていきそうな気配があります。

     現在の資本金は2205万円。救急救命サービス関連のコンサルティング収入や個人の出資などで事業を進めています。救急救命サービスのビジネスは正直、無理ゲー(クリアが非常に困難なゲームの意味)とも言われますが、僕は困難に燃えるタイプ。テクノロジーの発展を追い風に、命を救う挑戦を続けます。


    企業概要

    事業内容:救命支援アプリの開発・運用

    本社所在地:東京都文京区

    設立:2014年6月

    資本金:2205万円(19年8月現在)

    従業員数:5人(19年8月現在)


     ■人物略歴

    げんしょう・まこと

     1981年生まれ。福井県出身。横浜市立大学卒業。ヨコハマ経済新聞で編集・ライターとして勤務。その後、不動産営業を経て、2009年フリーのアプリプランナーに。2013年に参加したハッカソンで、現在の救命支援アプリ「Coaido119」のルーツとなるアプリを発案して優勝。14年6月Coaidoを設立。38歳。

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