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デジタル変革の第一走者を目指す広島県(PR)

    「広島発デジタル・トランスフォーメーション」をテーマに基調講演を行った湯﨑知事
    「広島発デジタル・トランスフォーメーション」をテーマに基調講演を行った湯﨑知事

     広島県の湯﨑英彦知事が10月18日、都道府県知事としては初めて、アジア最大規模のIT・エレクトロニクスの国際展示会「CEATEC」で基調講演を行った。世界で急激に進むデジタル化の流れに対応し、「デジタル社会に向けた変革で、広島県はファースト・ムーバー(第一走者)になりたい」と語った。

    脳裏に焼き付いた2枚の写真

    広島県 湯﨑 英彦知事
    広島県 湯﨑 英彦知事

     湯﨑知事の脳裏に焼き付いたニューヨークの写真が2枚ある。1枚は1900年、もう1枚は1913年の撮影。この間に街の移動手段は馬車からクルマへと変貌を遂げていた。大衆車のT型フォードが発売されたのは1908年。わずか5年で馬車がクルマに置き換わっていたのだ。

    「馬車がなくなったというだけではなく、馬の蹄鉄を修理したり、飼い葉を売っていた人の仕事が消えてしまった。デジタル社会の到来は、これと同じ衝撃を社会にもたらします。だからこそデジタル・トランスフォーメーション(DX、デジタル社会に対応した変革)で広島県は先手を打つ必要があります」と湯﨑知事は語る。

     デジタル化には、社会課題を解決できる面と、産業や社会、就業構造を劇的に変えてしまう面があり、広島県は、この〝攻めと守り〞の双方でどこよりも早く「対応していきたい」と語る。

    デジタルで県の課題を解決

     すでに取り組んでいるのが、広島県の農水産物の生産安定化、インフラの維持や補修、県の防災・安全の向上に向けたデジタル技術の活用だ。

     広島県では、2018年度から「ひろしまサンドボックス」という業種・業界を超えた共創プロジェクトを推進している。企業や大学、研究機関など700を超える団体や個人が参加しており、3年間で10億円規模の県予算を投入する。

    「これまで誰もやったことがない新しいソリューションを、失敗してもいいから、作っては壊すサンドボックス(砂場)のように取り組んでもらいたい、という狙いです」(湯﨑知事)

     すでに9つの実証プロジェクトが始まっており、呉市の大崎下島では、県の主要農産物であるレモン栽培を、センサーやロボットを使って農作業を自動化する実証プロジェクトを始めている。

    レモン栽培自動化の実証プロジェクト
    レモン栽培自動化の実証プロジェクト
    レモンの育成状況をセンサーで把握
    レモンの育成状況をセンサーで把握

    江田島市のかき養殖では、シャープやNTTドコモ、東京大学と共に、ドローンによる空撮や海中のセンサーで海の栄養状態などをデータ化し、生産の最適化を進めている。

    ドローンによる空撮でかきの養殖の状況を把握
    ドローンによる空撮でかきの養殖の状況を把握

     これより一歩早く2012年9月に広島県と「水ing」(荏原製作所、三菱商事、日揮の合弁会社)の共同出資で設立した「水みらい広島」では、設備の老朽化や技術者不足に悩む水道事業でデジタル技術による課題解決に取り組んでいる。「人口が減少する地域で水道料金収入が減っても設備は維持する必要があります。だからこそ水道の経営効率化は大きな課題です」。広島県は「水ing」と公民連携で浄水場や水道管などのデータをデジタル化し、経営効率化に取り組んでいる。

    浄水場の状況をデジタル端末で把握し管理する「水みらい広島」
    浄水場の状況をデジタル端末で把握し管理する「水みらい広島」

     台風や豪雨による土砂災害をいかに事前に予防し、被害を最小限に食い止めるか、という日本列島全体が直面している異常気象への対策でもデジタル技術の活用を進めている。

     道路に面した法面の岩盤崩壊や道路の陥没を事前に予測するためにセンサーやドライブレコーダーから得られるデータをAI(人工知能)で分析し、事故予防に備えるのだ。「広島県には監視を強める必要がある法面のある道路延長は1140㌔㍍あり、人間の力だけで対応するには限界があります」。そこで法面にセンサーを付けたり、ドライブレコーダーのデータを集め、「法面の監視や法面崩落の前兆を把握し、適切なタイミングで補修していきます」というわけだ。

     また、道路面の状態を把握するために年間5000万円、5年で2億5000万円を予定しているが、デジタル化により、これを削減する方針という。

    ものづくり県の挑戦

     県内総生産の約3割が製造業という「ものづくり県」の製造現場におけるデジタル化への対応も急務だ。

     広島県に本社を置くマツダは、自動車開発にコンピュータ・シミュレーションを駆使する「MBD(モデルベース開発)」を採用しており、「クルマづくりのデジタル化では最も先進的」(湯﨑知事)。この知見やノウハウをクルマ以外にも展開し、工作機械のデジタル化やIoT化などでモノ作り全体、さらにはサービス業への横展開も視野に入れています」という。

    「金属を加工したり、部品を組み上げる工程に、ものづくり県広島が生み出す付加価値がありました。それがデジタル化によって外に流出しないよう自らがデジタル化していく取り組みが必要です」と、県が先陣を切る必要性を強調する。

     行政のデジタル化も進めていく。例えば移住相談をAIが対応するという実験だ。「広島県への移住相談に対応する県の女性職員、平野さんのノウハウや知見をAIに学ばせて、AI平野さんにオンライン上のチャットで移住相談できる体制を整備しています。行政のデジタル化は、人員削減というより、データの集約や分析などをAIに任せ、付加価値の高い仕事に県の職員が集中できる体制を目指したい」という。

     最後に湯﨑知事はこう語る。「デジタル化は否応無しにやって来ます。その衝撃波とスピードは我々の想像をはるかに超えたものになるでしょう。だからこそ広島県が先手を打つ必要があるのです。馬車からクルマ社会への変貌で便利になった反面、馬に飼い葉を与える人の仕事が消えてしまった歴史から学ばなければいけないのです」

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