週刊エコノミスト Online勝ち残る・消える大学

改革する大学 地方や米の小規模大に好事例 「面倒見の良さ」がカギに=寺裏誠司

    (出所)日本私立学校振興・共催事業団「私立大学・短期大学等入試志願動向」より編集部作成
    (出所)日本私立学校振興・共催事業団「私立大学・短期大学等入試志願動向」より編集部作成

    「私立大学・短期大学等入学志願動向」から、2015年度と19年度の入学定員規模別の入学定員充足率(図)を見てみると、15年度は入学定員800人未満の大学が定員割れしていることが分かる。15年以前は定員規模が小さい大学ほど、定員割れの可能性が高い状態が続いていた。

     政府は、都市部にある大規模大学の定員超過が地方などの小規模大学の定員割れを助長していると指摘。地方創生の観点も含め、16年度から18年度まで段階的に3大都市圏に位置する大中規模(大学全体の収容定員4000人以上)の私立大学の入学定員管理を厳格化し、定員超過を抑制してきた。

     超過率を超えると私学助成を全額不交付にするという措置をとったため、その効果は絶大であった。例えば入学定員3000人の大学が1・2倍に定員超過していたものを1・1倍に是正すると、300人もの入学予定者が別の大学に流れる。これは、入学定員300人で定員割れ10%の大学10校分の定員を充足できる計算になる。

     16〜18年度の3年間、偏差値上位の大規模大学が合格者数を大幅に減じたため、受験生は大混乱に陥った。模擬試験の判定で合格ラインに達していた大学に合格できないという、これまでにない変化が起きたのである。その結果、雪崩のごとく受験生が下位大学に流れ、定員割れに苦しんでいた小規模大学は何もしなくとも定員が充足することになった。3年間でその効果が如実に表れ、定員割れのボーダーラインが800人未満(調査対象内418校)から200人未満(142大学)に大幅に改善されている。

     しかし、今後も18歳人口は激減していくため、この状態は長くは続かないだろう。淘汰(とうた)までの猶予期間が数年だけ伸びたに過ぎず、小規模大学ほど経営の危機が高いことに変わりはない。筆者はこれまで31年間で330件以上の大学改革を支援してきたが、近年は特に中小規模大学の経営陣に安堵(あんど)感が広がり、危機感が薄れてしまっている。これが根本的な改革への遅れにつながりかねないことに懸念を感じざるを得ない。

    (出所)大学通信の資料より編集部作成
    (出所)大学通信の資料より編集部作成

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    「地域共生」で高い就職率

     一方で、小規模ながらも改革を推進し、安定的に定員が充足している大学も複数存在する(表)。一部ではあるが地方の小規模大学の一例から改革をひもとく。

     共愛学園前橋国際大学は学長を中心に改革を推進し、「地域との共生」を掲げ地域と連携した教育プログラムを構築・展開している。講義の8割は、学生に能動的な参加を促す「アクティブ・ラーニング型」で実践するほか、学修成果や学内外での活動成果、取得資格などを電子情報として入力・蓄積していき、自己分析や就職活動などに役立てる「ポートフォリオシステム」を提供。高い就職成果につなぎ、その結果が募集成果へとつながる好循環を生み出している。

     岡山県の津山市に位置する美作(みまさか)大学は、食物や児童、社会福祉分野の専門家を育成。個々の学生に寄り添う面倒見の良い学生指導が売りで、就職率は毎年ほぼ100%を維持している。対策講座や模試を実施するなど、国家試験の取得支援も充実しており、合格率は全国でもトップレベルを誇る。

     新潟国際情報大学は2年次後期から約半年間、希望者全員が提携先の海外大学に留学できるプログラムを設ける。また、夏休みを利用したインターンシップ制度、学業優秀者や資格取得者に対する奨学金制度の充実化、1年次からゼミ指導を行うなど、学修意欲を高める取り組みを進めている。

     長浜バイオ大学は国内初のバイオ・生物学系の単科大学で、3年次までに約900時間を実験に充て、企業の第一線で通用する知識を身につける。大学への人材ニーズ調査や授業アンケートなどを教育プログラムに反映するなど、教育への取り組み改善も積極的だ。

     これらの小規模大学に学べることは、学生の成長支援を第一義とした改革を推進していることだ。

    世界7都市で学ぶ米大

     海外では、さらにその先の改革とも言える、これまでの概念を根底から覆す新たなタイプの大学も生まれている。

     特に注目されているのが米国のミネルバ大学だ。1学年120〜200人の全寮制大学でキャンパスを持たず、4年間でサンフランシスコやベルリン、ロンドンなど世界7都市を移住し、各都市のテーマに沿った課題に取り組む。講義は教授と少数の学生がオンライン教室に集まってディスカッション形式で行われるほか、都市ごとに現地の企業、NPO、行政機関、研究機関との協働プロジェクトへの取り組みも実践できる。受験生に求められる水準も高く、合格率は2%以下と世界で最も合格しにくい大学とも言われている。

     国内でも、より実践的な職業教育を行う「専門職大学」がある。従来の大学と違い、専任教員の4割以上を現場で活躍する実務家で構成。授業の3分の1を実習と実技に充て、インターンシップに600時間以上を費やす。専門職大学の認可基準は厳しく、19年4月開学の2大学と、20年4月に設置認可された7大学のみとなっている(専門職短期大学は除く)。

     その中でも注目されているのが、20年4月開学予定の「情報経営イノベーション専門職大学」だ。ICTを活用し、ビジネスのイノベーションを生み出す人材を育成する大学で、専任教員の8割が産業界でもトップクラスの実務家で構成されており、加えて150人以上の客員教員も人材育成を支援する。また、すでに150社以上の企業が教育連携を表明。約5カ月間のインターンシップを実施できる体制も整え、学生全員が4年間に最低でも一度は起業に挑戦するという試みも実施する予定だ。

     今後、さらに少子化が進む国内市場において、大学経営はこれまでにない改革が必要になる。生き残り策を見いだすには、「大学らしい」という固定観念から脱却しなければならないだろう。

    (寺裏誠司・学び代表取締役、大学支援機構理事)

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