100兆円の円高爆弾で1ドル=80円も=市岡繁男
最近の株価は景気の実態を反映しておらず、先物主体の投機的な動きだという批判が一部の投資家の間にある。日経平均株価の時価総額は390兆円だが、先物を使えば、その30分の1以下の資金で指数を動かせるというのだ。これに対し、1日で1・1兆ドル(120兆円)の資金が動くドル・円市場は巨大で、マーケットを操作することは不可能だろう。
そんなドル・円のチャートはいま、三角もちあいという形状で(図1)、次は円安・円高のどちらか一方に傾くシグナルだ。日経平均のチャートは下値を切り上げ、上値を追う力強い印象を受けるが、株価と連動することが多いドル・円市場は、方向性にまだ結論を下していない。
だが、流れはすでに円高・株安に傾いているのではないか。2013年からの円安進行過程で巨額の対外証券投資が行われた。そんな海外投資を促進した形の日銀の当座預金残高の増加ペースは鈍化し、証券投資だけが上滑りしている(図2)。
海外発の金融危機が日本にも波及した07~11年は、株安に伴って為替は大幅な円高に振れた。投資家が外債・外株を売却する過程で、外貨を円に替えたからだ。そんな潜在的な円高要因である対外証券投資が13年以降だけで約100兆円もある。海外発の株・債券の急落が起きるなら、1ドル=80円に戻るような円高もあり得よう。
(市岡繁男・相場研究家)