マーケット・金融

コロナ、米中覇権戦争……不安要素が目白押しで歴史的高値の「金投資」 本当にこの先も上昇し続けるのか=立沢賢一

金は安全資産

添付のチャートはNY金(ゴールド)の約44年間の値動きと主な変動要因がわかるロングチャートです。

直近、ゴールド価格が急騰したのには幾つかの理由があります。

(1) 新型コロナウイルス感染第2波への懸念や再び激化する米中対立など、世界経済の先行き不透明感が安全資産であるゴールドへの資金流入を促したこと

(2) 世界各国中央銀行による大規模金融緩和により世界中で金利低下が加速し、ゼロ金利状態になったことで金利の付かないゴールドの投資妙味を強めたこと

(3) ゴールドの供給量は有限であることから世界各国の準備金の一環としてゴールドの保有が増加傾向にもあること。

とは言え、ゴールドもその時の世界情勢によって、価格が下がることもあります。例えば、昨年11月には1週間で4%下落し、3ヶ月ぶりの安値まで下落したこともありました。

金は長期保有が基本

どの様なゴールドの投資戦略を持つべきかに関して、ゴールドは長期保有が基本です。

ゴールド投資は資産全体の価値を安定させる効果を考慮すべきであり、つまり、保有資産の価格変動リスクヘッジとしてゴールドに投資するのは効果的です。

何故なら、ゴールドは株式や債券と異なった値動きをする傾向が強いからです。金利や配当がないにもかかわらず、各国の年金基金が運用資産にゴールドをポートフォリオ戦略の一部に組み込むようになったのはそのためです。

今後も金は上昇を続けるのか?

今年はゴールドが買われる理由が年初から目白押しです。

(1) 米国によるイランのソレイマニ最高指導者の殺害から始まり、その後すぐに(2) 新型コロナウイルスショックが発生しました。そして、これからは、(3) 米中覇権戦争の深刻化という地政学リスクが高まりつつあります。また、(4) 新型コロナ感染第二波の影響による経済の先行きに不透明感は増しており、(5) 金利を生まない金の弱点は世界的な超低金利時代に突入している現在、投資家にとって重要な要因ではなくなっています。

この様に分析しますとゴールド市場は青天井の如く上昇するかの様な気になります。たとえ、新型コロナ感染第二波が回避されたとして、売り圧力に押され、押し目があったとしても、ゴールドはもう暫く高値圏を維持するというのが私見です。

しかしながら、添付のチャートをご覧いただくと、ゴールド価格が前回の高値から下げ、今まさに前回の高値を超えたレベルに達したのが分かります。

最近は、ゴールド投資をする新規投資家が増えているのと同時に、現在保有しているゴールドを売却する個人投資家もかなり出てきています。

長期投資としてのゴールド投資でしたら、ゴールドは保有し続けるべきです。短期投資でしたら、一旦は利食いしたくなる様なチャート形状しているのも否めません。結局のところ、どちらも正解で、要するに、投資家ご自身がどの様な戦略でゴールドを保有するのかという目的意識を持って投資活動することが必要だと思われます。

蛇足ですが、最近ではゴールドよりもシルバーの上昇率が高かったり、新型コロナショックの影響を全く受けていないカラーダイアモンドなど、金融市場との相関性がない投資資産が見直されています。

馴染み深いという点ではゴールドですが、それ以外にも投資資産が存在することも脳裏に残しておいて頂けたら良いでしょう。

立沢賢一(たつざわ・けんいち)

元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。

Youtube https://www.youtube.com/channel/UCgflC7hIggSJnEZH4FMTxGQ/

投資家サロン https://www.kenichi-tatsuzawa.com/neic

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