【週刊エコノミスト創刊100年キャンペーン実施中】いまなら週刊エコノミストオンラインをお申し込みから3カ月間無料でお読みいただけます!

投資・運用コロナ激変 不動産

「2025年には東京・港区の賃料は23%下落する」AIが導く衝撃の予測

 東京・港区の2025年のオフィスビル予測賃料は、新型コロナウイルスによって2割下落する──。

 不動産テックベンチャー「estie」(平井瑛・代表取締役CEO)が独自開発した人工知能(AI)アルゴリズムが、衝撃的な数字をはじき出した。

 estieは、非公開情報を含む24万件のオフィス物件の賃料動向やマクロ経済情報をAIアルゴリズムに学習させ、今後5年間の成約賃料水準について、(1)コロナの影響がなかった場合のシナリオ(20年2月時点のデータを活用)、(2)コロナの影響下でのシナリオ(20年7月時点のデータを活用)の二つの将来推定値を算出した。

コロナの影響20%

 港区では、仮にコロナの影響がなかった場合、今後のオフィス床面積の大量供給によって20年後半から賃料は下がり始めるものの、人気の集中する新築ビルが平均賃料を押し上げるため、全体の下落幅は限定的であると推定された。ところが、コロナの影響を織り込むと、25年7月時点の賃料は、コロナの影響がない場合と比較し、20%低くなると試算された。

 また近年、賃料急上昇が特徴的であった渋谷区では、コロナがなかった場合でも20年後半から賃料の下落が見込まれ、コロナによって25年7月時点ではさらに13%下落すると試算された。

 大企業が集中する千代田区の場合、コロナがなければ平均賃料は21年6月まで緩やかに横ばい、または上昇を続け、そこからゆっくりと下落する見込みだった。一方、コロナの影響下では、25年7月時点でコロナがない場合と比較して、マイナス10%程度の違いが生じた。

 基準点を20年2月に置いた場合の、コロナ禍における25年7月までの下落幅は、港区でマイナス23%、渋谷区でマイナス18%、千代田区ではマイナス13%。やはりスタートアップ企業の集積が進む港区、渋谷区で、影響が顕著に表れることが分かる。

 特に港区は、今後の新規供給が集中していることもあって、大幅な賃料低下が見込まれる。estieでは「渋谷区では19年の大型供給後、再開発が一服しており、今後は新規供給量が極端に少なくなることから、需給の悪化が抑えられるのだろう」と分析する。

需要沈む老朽化ビル

 その一方で、こうしたAIの厳しい予測について、否定的な見方もある。ニッセイ基礎研究所の吉田資・主任研究員は「実際には、リーマン・ショック(08年)時ほどの激しい落ち込みはないのではないか」と予想する。

 三幸エステート・ニッセイ基礎研究所「オフィスレント・インデックス」などを基に、ニッセイ基礎研究所は都心5区(千代田、中央、港、渋谷、新宿)の最上級のAクラスビル(延べ床面積1万坪以上、基準階床面積300坪以上、築年15年以内、および設備などのガイドラインを満たすビル)について、24年までの将来的な空室率と賃料の推計値をコロナの感染拡大前の2月と感染拡大後の5月の2回にわたって公表した(図2)。

 これによると、空室率は今後の供給量の増加に合わせてじわじわと上昇し、24年時点では4・3%と2月時点の予想を1ポイント近く上回る。一方、賃料は23年ごろまでゆっくりと下落するものの、コロナの影響は徐々に弱まり、24年には再び上昇に転じ、2月時点の予想に近づく。

 吉田氏は「空室率は、今後上がったとしても、リーマン・ショック後のように5%を超えるような事態には陥らないだろう。経済は少なからず戻るはずで、賃料の下落はさらに限定的とみる」と話す。

 理由として、現在も増加傾向にある東京都心の夜間・昼間人口を挙げる。都内の人口は25年まで、特に23区では30年まで増加すると予想されている。また、都が今年3月に発表した「東京都昼間人口の予測」によると、都内の昼間就業者数も25年までは増加が見込まれる。「オフィス需要は底堅い」という。

 もう一つの理由として、リーマン・ショック時には金融業が都心Aクラスビル需要のけん引役を果たしていたのが、現状では不況の影響を受けにくいIT関連やコンサルタントなどの専門業種に取って代わられている点を挙げる。「撤退などのリスクは小さい」という。

 一方で、吉田氏は「(グレードが下がる)Bクラス、Cクラスビルとなると話は別だ」と警告する。

 オフィスレント・インデックス20年第2四半期(4〜6月)によると(図3)、都心Aクラスビルの空室率と賃料は前期比ではほとんど変化がなかったのに対し、Bクラスビル(1フロア面積200坪以上でAクラスに該当しないビル)は空室率が前期比0・3ポイント増の0・7%で、賃料は1坪当たり58円下落。Cクラスビル(1フロア面積100坪以上200坪未満のビル)に至っては、それぞれ0・5ポイント増の1・1%、1坪当たり1851円の下落と、クラスが下がるにつれてコロナの影響が増している。

 今後、企業によるリモートワークや住宅地に近い郊外エリアに支社機能を置く「オフィスの分散化」は間違いなく進むと予想される。吉田氏は「都心の高機能ビルは底堅く推移する一方、古いビルは沈んでいく可能性がある。エリアによっても人気のあるところとそうでないところで、明暗が分かれるだろう」と語る。

(編集部)

(本誌初出 2025年のオフィス市況 AIが衝撃予測 「東京・港区の賃料は23%下落する」=編集部 20200901)

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月6日号

狭まる包囲網 税務調査 富裕層、暗号資産、リベート……14 国税が示す相続財産評価 “伝家の宝刀”の3基準 ■加藤 結花17 狙われる富裕層 海外口座情報は190万件超 円安で多額の為替差益に注意 ■高鳥 拓也20 海外財産 「3調書」が国税の捕捉の武器 富裕層を狙い提出義務者拡大 ■多田 恭章23 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事