セグウェイを超える?孫正義氏の弟が「電動スケボーベンチャー」に出資した理由
一見するとスケートボードのような形だが、地面に置いて乗るだけで動き出す。そんな電動の移動手段「WALKCAR」(ウォーカー)を今年6月に発売した。
(聞き手=白鳥達哉・編集部)
ウォーカーのコンセプトは「持ち歩けるクルマ」で、軽さと小ささを徹底的に追求して設計しました。
大きさは幅34.6センチ、長さ21.5センチとノートパソコン程度で、四つの車輪が付いています。
高さは7.4センチ、重さは2.9キロと、トートバッグなどに入れて持ち運ぶことが可能です。
ボディーはカーボン素材、車輪を支えるフレームは航空機の翼などにも利用されているアルミ合金を使って耐久性も備えました。
両足それぞれの前後2カ所にセンサーを内蔵しており、両足を載せると前進、片足のつま先を軽く上げると減速します。
また、軽く膝を曲げて重心を傾ければ、曲がりたい方向に曲がることもできます。
倉庫など屋内での移動を想定した「歩行アシスト」(最高時速6キロ)や、早く移動できる「スポーツ」(最高時速16キロ)など、三つの走行モードを用意しました。
モーターで駆動し、1時間の充電で歩行アシストモードなら7キロ、スポーツモードなら5キロの走行が可能です。
日本ではウォーカーは原動機付き自転車の扱いとなりますが、ナンバープレートなどを装着できないので、公道は走行できません。
そのため、私有地での利用を想定し、高速走行の場合はヘルメットなどの着用も求めています。
オンラインと「蔦屋家電+(プラス)」(東京都世田谷区)で販売し、価格は19万8000円(税別)。
海外への発送も受け付けています。
低速モデルの開発も
今年6月の発売開始からすでに約400台弱を販売しました。
時速6キロ以下でしか走行できない製品を開発すれば、原付きではなく歩行補助車の扱いとなってナンバープレートも不要なため、今後はそうしたモデルの開発も予定しています。
開発のきっかけは、大学院時代に友人から「ノートパソコンぐらいの大きさの乗り物を作れないか」と相談されたこと。
友人が遊びに行った米スタンフォード大学で、キャンパスがあまりに広くて歩くのが大変だったため、持ち運べる乗り物があったら便利なのに、と感じたそうです。軽い気持ちで木の板やラジコン用のモーターなど簡単な材料で試作してみると、意外にも人を乗せて走ることができました。
大学院修了後、ソフトバンクに勤めましたが、やはり自分で起業してみたいと3カ月で退社。
ソフトバンクグループの孫正義社長兼会長の弟で投資家の孫泰蔵さんらから資金の支援を受けながら開発を続けてきました。
最後の難関となったのがモーターです。
出力や耐久性を満たすモーターが見つからずに悩んでいたところ、モーターのメーカーに勤める親戚と出会ってオリジナルのモーターを開発してもらえることになりました。
手軽に持ち運べるウォーカーに、自分たちも気づいていない使い方があるかもしれない。
試乗会など体験してもらう機会を多く設けて、まずは知ってもらうことに力を入れていきたいと思っています。(挑戦者2020)
(本誌初出 佐藤国亮 ココアモーターズ代表取締役 乗るだけで動く“スケボー” 20201117)
企業概要
事業内容:電動モビリティーの開発・製造・販売
本社所在地:東京都渋谷区
設立:2013年8月
資本金:990万円
従業員数:4人
■人物略歴
さとう・くにあき
1989年東京都生まれ。福岡市立福翔高校、東京電機大学卒業。2013年3月芝浦工業大学大学院理工学研究科電気電子情報工学専攻修了。13年4月ソフトバンクに入社後、起業のために3カ月で退社。2013年8月にココアモーターズを創業。31歳。