経済・企業ガソリン車 ゼロ時代

EV用バッテリーで世界シェアトップ 「中国・CATL」の知られざる正体

    福建省にあるCATL本社(Bloomberg)
    福建省にあるCATL本社(Bloomberg)

    電気自動車(EV)向けの電池製造で中国最大手の寧徳時代新能源科技(CATL)は、世界シェアで2017年にパナソニックを抜いて首位になり、以降トップを維持している(図)。

    中国国内ではシェア49%で圧倒的強さを見せている。

    21年1月6日時点の時価総額は約14兆円とパナソニックの4倍超の規模まで拡大した。

    新技術と高品質生む人材

    CATLは中国の大手自動車メーカーと車載電池の合弁会社を設立して供給する一方、米テスラ、ドイツのBMW、ダイムラー、フォルクスワーゲン(VW)、仏PSA、そしてトヨタ自動車、日産自動車、ホンダなど世界中の自動車大手に「全方位」で供給する。

    20年は投資額500億元(約7500億円)で、電池の生産能力を23年に300ギガワット(20年比で5倍程度)に引き上げる計画だ。

    加えて18年にドイツ・チューリンゲン州に初の海外工場を、21年にはインドネシア工場を建設し、今後、米国での工場建設も視野に入れるだろう。

    CATLは鉱山資源の確保、電池用原材料の調達、素材開発、製造(セル・モジュール・パック)、コバルト、ニッケルなどのリサイクルを一貫して行っており、コストダウンを図る。

    電池生産1ギガワット当たりの設備投資は17年の3・5億元から20年の2・5億元まで低下した。

    「このコスト水準はLG化学の8割程度だ」(地場電池メーカー幹部)。

    また、CATLの電池セルコストは17年の134ドル/キロワット時(kWh)から、20年の88ドル/kWhへと、約35%のコストダウンを実現した。

    CATLが中国でテスラの普及車「モデル3」(小売価格約390万円)に割安の電池の提供を可能にしたのは、電池の大容量化と電池パックのコストダウンを実現した「CTP(セル・トゥ・パック)」という技術である。

    CTPを採用した新型電池は、部品点数を40%削減して電池パックの統合効率を現行の75%から90%に高め、生産効率を50%向上させた。

    また、EV車台と電池を一体化する新技術「CTC(セル・トゥ・シャシー)」を開発中で、これは動力配分の最適化とエネルギー消費の低減で航続距離1000キロを実現するという。

    コストで補助金がなくても対ガソリン車で優位性を確立できる可能性がある。

    CATLの開発陣は、海外で経験を積んだ若い技術者がそろう(CATL市場部提供)
    CATLの開発陣は、海外で経験を積んだ若い技術者がそろう(CATL市場部提供)

    CATLが躍進した原動力は、海外企業で活躍していた一流の技術者たちだ。

    曽毓群会長自身が物理学博士号を持つ技術者であり、業界トップレベルの研究開発体制を構築しようとしている。

    また、中国通信機器大手から海外事業の経験者、さらに独ボッシュなど自動車部品大手から技術者を大量にスカウト。

    20年6月末時点で、研究開発人員は5368人と従業員全体の2割を超えた。

    特に400人超の電池管理システム(BMS)部門は世界最大規模だ。

    研究開発人員に対し、業界平均より約4割も高い給与水準を設けるとともに、従業員向けの持ち株奨励制度も設けている。

    20年末時点で4573人に総額約10・5億元(約164億円)の自社株を与えて人材を確保し、経営の足場を固めた。

    本社施設、工場・研究センター、社員寮・マンション、ホテルが一体化された企業城下町の通称CATL村には、海外から帰国した博士約150人、修士約2000人を含む技術者が働いている。

    若手に大きな仕事を任せ、密度の高い業務を遂行させることはCATLの戦力向上につながる。

    その一人、独ウルム大学で電池材料を専攻した劉倩博士は、大手化学メーカーを経て17年にCATLに入社、最先端技術研究部で次世代電池の研究開発を行っている。

    「研究成果の実用化に挑む中で、自分の明るい未来も見えてきた」と話す。

    世界一の電池メーカーで自分の夢をかなえることはCATLの若い技術者に共通する価値観だ。

    その熱気は明らかに従来の中国製造業とは一線を画すほどに高く、筆者は今後の潜在力を実感した。

    課題は世界供給網の構築

    18年以降、中国政府のEVの販売支援を目的とした補助金額は、段階的に減額されるとともに、補助金支給の技術条件も厳格化される。

    新型コロナの影響によるEV市場の減速に加え、EVメーカーがコスト上昇分を電池メーカーに転嫁するため、電池価格が下落するだけではなく、電池メーカーの売掛金回収期間も引き延ばされる傾向にある。

    業界平均は約250日程度だが、「CATLは売掛金の回収期間約70日を維持し、強気の姿勢を示している」(地場自動車メーカー幹部)。

    ただ、CATLの粗利益率は、16年の43・7%から20年1~9月の27・4%へと低下している。今後政府のEV補助金がなくなれば、CATLはグローバル市場におけるサプライチェーン(供給体制)を構築せざるを得なくなる。

    ドイツのVWとダイムラーは20年にそれぞれ中国大手電池メーカーの国軒高科、ファラシス・エナジーに出資し、ホンダもCATLの第三者割当増資を引き受け、同社株の1%(約600億円)を取得すると発表した。

    電池を安定調達することが各社にとって喫緊の課題だ。こうした動きを見ると、外資系自動車メーカーにとっての電池は、中国頼りの状況だ。

    中国勢に対し、日韓の電池メーカーも追随。LG化学は21年にテスラの中国向け車種「モデルY」にハイニッケルNCMA電池を南京工場で生産し、エネルギー密度の高い「4680」電池の量産を目指している。

    パナソニックは米国で電池生産能力を増強し、欧州進出も模索している。

    EV需要の増加が見込まれる中、性能を左右する良質な電池の争奪戦が生じており、その需要は拡張し続ける中国の電池メーカーや素材メーカーの成長を支えている。

    日本企業が技術的に先行していた分野でも、設備投資に慎重になれば、需要を見据えて思い切った投資をする中国企業に生産規模で抜かれる。

    CATLは製造技術とコストの面で日本・韓国企業を超え、業界に君臨する日は近いかもしれない。

    (湯進・上海工程技術大学客員教授)

    (本誌初出 電池の覇権 抜け出した中国CATL 「全方位戦略」支える開発力=湯進 20210202)

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