教養・歴史アートな時間

美術 生誕150年記念 モンドリアン展 純粋な絵画をもとめて=石川健次

ピート・モンドリアン≪大きな赤の色メン、黄、黒、灰、青色のコンポジション≫ 1921年 デン・ハーグ美術館 Kunstmuseum Den Haag
ピート・モンドリアン≪大きな赤の色メン、黄、黒、灰、青色のコンポジション≫ 1921年 デン・ハーグ美術館 Kunstmuseum Den Haag

変わってゆく画風を一目瞭然に “普遍”の視覚化への挑戦

 1918年、スペイン風邪に罹患(りかん)したピート・モンドリアン(1872~1944)は、体調を崩していた。本展図録によれば、スペイン風邪で5000万人もの人命が失われ、その数は第一次世界大戦の死者1500万人を大きく上回る。

 幸運にも病から生還したモンドリアンは翌19年、「1914年以降の作品を全て梱包(こんぽう)し、それ以前の自然主義的作品全て」(図録)を売却した。さらに翌20年から「作品全てが、水平線、垂直線、三原色の矩形(くけい)からなる構成」(同)となる。図版は翌21年、直線と限られた色面という単純な要素で構成された、代名詞的作品のなかの一点だ。

 これら抽象絵画の到達点とも謳(うた)われる作品で有名なオランダの画家、モンドリアンの初期から晩年まで、その画風の変化、生涯の軌跡を本展は丹念に追う。スペイン風邪が不世出の芸術家の命を奪わなかったことに、思いがけず強く安堵(あんど)の気持ちを抱いたのは、コロナに揺れる今を生きていることと無縁ではないだろう。

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