教養・歴史書評 『「利他」とは何か』 伊藤亜紗編、中島岳志ほか著 集英社新書 924円 2021年5月7日 『「利他」とは何か』 伊藤亜紗編、中島岳志ほか著 集英社新書 924円 「利他」について専門の異なる5人の研究者が論じた。といっても「自己利益を求めるばかりでなく、人のために行動しよう」と道徳を説くわけではない。まず目を向けるのは、利他がはらむ危険性だ。利他的行動の効果を求めれば、相手を支配しコントロールすることにつながる。返せない贈与は相手に負い目を与え、上下関係を生む。利他を考えることは、他者との関わり方を考えることなのだ。作為を超えた不確実性に開く姿勢が、5人に通じる。(A) 前の記事 『フィッシュ! アップデート版』 スティーヴン・C・ランディンほか2人著 早川書房 1980円 次の記事 『平成金融危機 初代金融再生委員長の回顧』 柳澤伯夫著 日経BP 2750円 文字サイズ 小中大 印刷