経済・企業日本経済 大復活

米国株 S&P500が最高値を更新 「メガ級」経済対策が後押し=岡元兵八郎

米国の株式市場は好調が続く (Bloomberg)
米国の株式市場は好調が続く (Bloomberg)

 米国を代表する株価指数のS&P500が史上最高値を更新し続けている。コロナ禍、世界で最も多くの死者を出した米国の株価指数が、である。一体なぜなのか。

 株式市場は経済の先行指数と言われる。S&P500が半年から1年先の米国経済の回復を織り込むという市場の基本的なメカニズムが機能しているだけのことである。回復に向かう背景として、米国政府がコロナ禍で急激に悪化した米国経済を立て直すべく自らの威信にかけてこれでもかと展開した「メガ級」の経済対策に加え、米連邦準備制度理事会(FRB)による積極的な金融政策が米国経済回復のバックボーンになっている。

 昨年春、米国では政府の責任において米国経済を一時的に停止させた。当時のムニューシン財務長官は「米国経済を政府の責任において一時的に止めるので、再開したら政府の責任において元の状態に戻す」と発言していた。

 施策の一つとして、米国政府はほぼ全ての国民に1人当たり総額35万円相当の給付金を支払った。そのお金は一時的に預金に、また株式市場に回ったというようなデータもあるが、最終的に消費に向かった資金も少なくはないはずだ。

 実際米国の今年1〜3月の個人消費は年率7・2%増と堅調な数字を発表している。米国政府によって経済対策に使われた資金は経済へ回り、企業はその恩恵を受けている。そのようなこともあり、米国企業の業績も堅調に推移してきているのだ。

 今年1月の半ばに発表された昨年第4四半期の前年同期比の決算発表は元々9%の減益予想だったが、実際には5・8%の増益とプラスに転じた。4月の半ばから発表されている今年の第1四半期の決算は、前年同期比で23・8%の増益予想だ(図1)。その後についても2桁の増益が続くと予想されている。この業績の回復が株価指数の上昇継続を正当化している。

割安銘柄大きく上昇

 米国株市場では、長い間GAFAM(アルファベット〈グーグルの親会社〉、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)銘柄に代表されるグロース(成長)銘柄が市場の上昇をけん引してきた。その間グロース銘柄がバリュー(割安)銘柄をアウトパフォーム(上回る)してきた。

 しかし、昨年の9月を境に割高感があったグロース銘柄が一服し、バリュー銘柄が大きくアウトパフォームし、株価指数全体を押し上げるという展開となった(図2)。このきっかけとなったのは、コロナ禍で急激に落ち込んだバリュー銘柄が業績回復するというシナリオである。その後もバリュー銘柄の上昇が一服すると、グロース銘柄が買われるローテーションを上手にこなしながら市場は最高値更新を続けているのだ。

 私は昨年末からS&P500は21年末に4100に達すると言ってきたが、予想より早く現実のものとなった。

 短期目線で個人投資家に米国株の買いを勧めているのではない。私はS&P500は今後10年間で今からほぼ倍になると考えており、長期的な投資で大切なお金を増やしていくことをお勧めしている。

 時々「米国株は高くないですか?」と、不信感を込めた質問を受けることもあるが、そのたびに私はこう答えている。米国は日本と違い、長期にわたり人口が増え続け、経済成長率も相対的に強く上昇を続けるとみられている。その過程において企業業績も相対的に高い成長を続けるだろう。

 加えて、米国にはグローバルに通用するイノベーティブな会社が多く存在する。今回コロナワクチンを世界に先駆けて開発したのは米国の企業だ。株式投資で高いリターンを上げるという意味ではどうしても米国株の方に分がありそうだ。

 また、日本が抱えるさまざまなリスクをヘッジするためにも、米国株投資は理にかなっている。目先のリスクとしては、長期金利の急激な上昇、増税策が企業に与える影響、米中対立の激化があげられよう。また、今後景気後退のような事態が起きたとしても、実はそのような局面が歴史的に米国株の絶好の買い場であったことを忘れてはいけない。

 米国株に投資をしたいのであれば、最も簡単なのはS&P500連動型の投資信託に積み立て投資をすることだ。これは証券口座で一度購入する設定をしてしまえば、銀行口座から自動引き落としで預貯金的な感覚で、自動的に買い付けをしてくれる。S&P500を株式市場でリアルタイムで売買したいのであればS&P500連動のETF(上場投資信託)がお勧めだ。

注目はGAFAM+T

 また、長期的に個別銘柄に投資をしたければGAFAM+T(テスラ)に代表されるグローバルなメガ成長銘柄への投資をお勧めする。彼らのサービスや製品はこれからも長い間使われていくからだ。

 短期的な目線であれば米国経済回復関連、インフラ投資の恩恵を受ける銘柄への投資であろう。自動車のゼネラル・モーターズ(GM)、航空機メーカーのボーイング、銀行のバンク・オブ・アメリカやシティグループ、航空会社のサウスウエスト航空、オンライン旅行サイトのブッキング・ホールディングス、建設機械メーカーのキャタピラーやディアなどが候補となる。

 また、リスク許容度の高い投資家で、5年以上保有するつもりの辛抱強さがあれば、90分の宇宙旅行を提供するヴァージン・ギャラクティックやアフリカのアマゾンと呼ばれるジュミア・テクノロジーズを時間分散で買うことをお勧めしたい。ボラティリティー(変動率)は高いものの、長期的には非常に魅力的なリターンをもたらしてくれると考えている。特定のセクターに偏っていない、バランスの取れたポートフォリオを持つことも重要だ。

(岡元兵八郎、マネックス証券チーフ・外国株コンサルタント)

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