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週刊エコノミスト Online ゼロからはじめる資産形成

ゼロからはじめる資産形成③ 「教育費が足りない!」を避けるには……「無理のない進路選択」と「0歳からの積立スタート」がカギ

教育には想像以上にお金がかかる
教育には想像以上にお金がかかる

 子どもには、やりたいことをさせてあげたい――。多くの親が、そう思うものです。教育費は「聖域」とばかりに、習い事や私立小学校の受験など、小さい頃からお金をかけてしまう家庭も少なくありません。しかし、子どもが成長し、本当にやりたいことが出てきた時に、お金が不足してしまうのでは元も子もありません。教育費は、子どもが独立するまでの一定期間だけかかる、いわば「ゴールの見える」支出です。一般的な費用を知り、計画的に貯めることがコツです。そこで、ポイントをお伝えします。

小学校から私立に入れるとこんなに高く付く

 教育費は一般に「子ども1人あたり2000万円」と言われますが、これは生まれてから大学卒業までの教育費を合計した金額の目安です。一度に払うお金ではなく、毎月少しずつかかるお金ですから、そんなに恐れる必要はありません。大切なのは、「毎月の収入から出せるか」という視点です。毎月かかるお金を、進路別にみてみましょう。

 公立よりも私立の方がお金がかかる、というのは皆さんイメージできるでしょう。ただ、小学校の場合、学費(学校に払うお金)は、私立は公立の8~9倍、入学後の習い事代も、私立に通う子どもの場合は公立に通う子どもと比べて3倍も高くつく 、というのは、案外知られていません。

 高校は、2020年4月から私立高校授業料実質無料化がスタートしているため、対象となる年収の世帯においては、月6万円よりも下がりますが、それでも無償化の対象外である制服代や修学旅行代などは、公立よりも高いのが一般的です。

一人暮らしの大学生への仕送り代は年平均90万円

 大学の費用は、毎月の収入から捻出するのが難しいため、貯金を使う家庭が多いでしょう。初年度にかかるお金(受験費用・入学費用・年間学費)は、日本政策金融公庫の調査(20年度・教育費負担の実態調査結果)によれば、国立の場合で182.8万円、私立文系は238.3万円、私立理系は277.5万円かかります。この年間学費には、定期代や参考書代が含まれていますが、資格学校代や部活やサークル代も出す予定がある場合は、もっと費用がかかるでしょう。さらに、一人暮らしをする場合は、仕送り代の平均は年90.3万円と、かなり家計負担が大きくなります。

 一般的に、高校3年時に、受験費用に加えて入学金や初年度学費の前期分を支払うため、この時点で50~100万円を捻出できる貯金がないと大変です。

高校卒業までの学費は家計からまかなうべし

 教育費を乗り切るために、高校までは、毎月の手取り収入で費用を全額支払える進路を選ぶことが大切です。受験結果によっては私立進学となるケースもありますが、私立無償化制度も活用し、できるだけ手取り収入で賄って、大学進学費用を残すようにしましょう。そのためにも、高校進学前から私立にかかる費用を想定し、支出を抑えられるように家計の見直しをしておくとよいですね。

 また、私立高校に進学した子を持つ低所得(生活保護受給・住民税非課税)世帯については、授業料以外の教育費(教科書費、教材費、学用品費、通学用品費、教科外活動費、生徒会費、PTA会費、入学学用品費、修学旅行費等)について、返済の必要がない奨学金「高校生等少額給付金」を受け取れる制度もあります。自治体によっても色々な制度があるため、情報入手に努めることも親の役目と言えるでしょう。

教育費貯金に活用できる四つの方法

 前述のように、大学の学費は初年度に180万~300万円近く必要です。親が出す予定の場合は最低限、高校3年時までに300万円を貯めておきましょう。筆者は、これに加えて、できれば高校入学時に200万円用意できると安心、とアドバイスしています。

 高校に進学する頃には、スポーツや勉強、留学など、やりたいことが明確になってくる場合が多いもの(もちろん個人差はありますが)。スポーツに打ち込む場合などは、寮付きの遠方の高校に進学して、仕送りが発生することもあるでしょう。コロナ禍の今は難しいですが、交換留学を希望する高校生もいます。また、どうしても行きたい大学の受験に失敗して浪人を希望する子もいます。「200万円」というのは、そうした場合に備えた「想定外貯金」です。使わなければ大学費用として使えばよいのです。

早いうちから積み立てておこう
早いうちから積み立てておこう

 では一体どのようにお金を貯めていけばよいのでしょうか。絶対貯めたい教育費は、生活費と分けて貯めておく仕組みづくりが大切です。主な方法を四つお伝えします。

①児童手当

 子どもが生まれてから中学卒業時(15歳の3月)まで受給できる児童手当は、全額貯めると約200万円となります(所得制限にかかる場合は約90万円)。指定する振込口座を生活費口座と別にして、いつの間にかなくなってしまうことのないように工夫するのがおすすめです。児童手当は、受け取れる人すべてが活用できる方法ですね。

※2022年10月から、年収が多い方の年収が1200万円以上の家庭は支給停止予定

②預貯金

 必ずかかる教育費は、その多くを、減るリスクのない預貯金などの安全資産で作るのが鉄則です。超低金利の時代ですが、ネット銀行などには普通預金の金利が0.2%とメガバンクの200倍のところもあります。給与口座の中で、「余ったら貯める」という意識では貯まりません。少しでも金利の高いところに毎月定額を積み立てて貯めていきましょう。毎月振り替えるのが煩わしい人は、他銀行から手数料無料でお金を移してくれる「定額自動入金」のサービスがあるネット銀行を使い、年に一度、金利が高い銀行に振り替えるのが良いでしょう。

③つみたてNISA

 大学入学までに10年以上あるならば、大学資金の一部は、投資の力を使って、少しでも増やせる方法を組み合わせるのも一手。価格の変動がある投資において、大切な教育費のための資産を一括で運用するより、コツコツ定期的に積立し、時間分散ができる方法が向いています。つみたてNISAは、年40万円までの元本について20年間運用益が非課税となる制度です。投資で備える場合は、必ず使う教育費ではなくあくまでプラスαとして考えるのが良いでしょう。

④学資保険

 教育費を貯める王道が、学資保険です。子どもの進学時に祝い金を受け取れる保険で、親に万が一のことがあった場合には、以後の保険料支払いが免除されるという特徴があります。昨今は、学資保険ではほとんど増えないから……と加入しない人も多いですが、親に万が一のことがあっても、死亡保険のようにすぐに保険金を受け取れるわけではないため、使ってしまう心配がありません。子どもの進学時に着実にお金を受け取れる学資保険は、教育費作りにピッタリ。払込期間を短く、受取時期を遅くするのが戻り率を上げるポイントです。元本割れする商品は選ばないように気を付けましょう。

教育費は時間差で作る!貯金計画の例

 これらの方法を組み合わせた、高校入学時に200万円プラスα、高校3年時に300万円プラスαを備えられる貯金計画の例をお伝えします。

 この表はあくまで計画の一例にすぎませんが、この計画を生まれてすぐに実行すると、15歳時に290万円、18歳時に328万円(年平均利回り2%で運用できた場合)用意でき、高校時代、大学時代を通じて、かなり安心感が生まれます。毎月積み立てる金額は、10歳までは2万5800円+児童手当。11歳から15歳までは1万円+児童手当。16歳から18歳までが5000円と、子どもの成長とともに減っていくため、無理なく続けられる方法です。参考にして、ご自身に合う組み合わせを考えてみてください。

 教育費は、家計から費用を賄える進路選びと、早い時期からの積立スタートで備えられます。親としてどこまでやってあげるか、家庭で方針を定めたら、目標に向かってコツコツ資産形成をしていきましょう。

(ライフヴェーラ代表/みらい女性倶楽部 鈴木さや子)

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