経済・企業注目の特集

2035年にEV5000万台に メーカー間の争奪戦で勝者となるカギは=編集部

    5000万台市場へ欧州先行 日本はブランド生かせるか=神崎修一

     2035年に世界の主要市場で販売される電気自動車(EV)は約5000万台──。

     これは、中国、欧州、米国、日本の総販売台数予測と、それに占める「EVの販売台数目標の割合」から導いた数字だ。予測はPwC(プライスウォーターハウスクーパース)の予測などを参考にした。(EV世界戦 特集はこちら)

     主要4地域・国の目標は、図中の円グラフの通りである。すなわち、中国1950万台、米国900万台、欧州2200万台で計5050万台。政府方針が固まっていない日本や東南アジア新興国、アフリカ・南米諸国などモータリゼーションが進行中またはこれから来る国々の販売台数も今後増加が見込まれる。35年には世界で販売される新車(約1億1000万台)のうち約4割がEVに置き換えられることになる計算だ。(図の拡大はこちら)

     現在の最大市場、中国の新車販売台数は35年に3900万台に拡大すると予想される。米国は同1800万台、欧州は2200万台、日本は350万台である。その上で各国政府が打ち出した新車に占めるEV比率の目標値(最大)は、中国50%、欧州100%、米国50%。これらを基に算出したEV(燃料電池車=FCVを含む)の販売台数予測が冒頭の数だ。

     中でも欧州連合(EU)の政策執行機関の中心である欧州委員会が7月に打ち出した「35年にEV比率100%」は自動車業界に衝撃を与えた。さらに米バイデン政権も8月に入り、30年のEV比率を最大で50%にする目標を盛り込んだ大統領令に署名した。

     自動車業界に詳しい東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは欧州自動車大手は次に勝てる技術としてEVに狙いを定めている」と指摘する。

     ターゲットは世界最大の自動車市場、中国だ。フォルクスワーゲン(VW)、ダイムラー、BMWの独3大手は、20年に中国で、ガソリン車など従来の内燃機関車とEVを含め、合計480万台の自動車を製造・販売した。ドイツ自動車工業会(VDA)によると、ドイツメーカーの中国市場での販売シェアは10年の17・5%から20年には24・4%まで拡大した。

     自動車に詳しいA・T・カーニーの阿部暢仁シニアパートナーも、中国市場の重要性を認める。4月の上海モーターショーには、インターネット検索大手の百度(バイドゥ)、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)、スマートフォン大手の小米科技(シャオミ)など異業種も相次いで参戦し、「ハイテク企業のパーティー」(阿部氏)のような様子だったという。

     欧米勢が完全に「次世代車はEV」と位置づけ、中国も国策でEVの「大衆車化」を進める中、日系メーカーも相次いでEV戦略を見直している。

    日本への期待大きいが…

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     日本勢はEV市場争奪戦で世界と戦えるのか? 編集部は8月上旬、トヨタ自動車、ホンダ、日産自動車など大手7社に対してアンケートを実施し、電動化戦略の状況を調査した(表)。

     結果を見ると、大きな傾向として、各社とも欧米の速い動きに対応するために車種ラインアップの拡充を急いでいることがうかがえた。

     また、各社共通の問題意識として浮上したのが、「バッテリー(電池)のコストを抑える必要がある」ことだ。EVのコスト構造の3割程度を占める電池の価格が下げられなければ、EVはガソリン車やHVに比べて割高になる。「今後補助金が削減されれば、消費者からは選ばれない」という危惧が根底にあるようだ。

     だが、補助金や電池性能など「おかまいなし」に、EVへと急傾斜している。

     出遅れた日本だが「武器」もある。米国の自動車雑誌『カーグルス』が10年以内にEVの購入を検討している人を対象に実施したアンケートで「EVを買いたいメーカー」は「1位テスラ、2位トヨタ、3位ホンダ」という結果になった。「EVを出していないトヨタ、ホンダが選ばれたことは、安全性や燃費で勝る日本車のブランドイメージはEVでも通用する証拠だ」(遠藤功治・SBI証券企業調査部長)。

     こうした武器も、EVという戦いの舞台に立たなければ役立たない。ガソリン車ゼロは35年だが、クルマの開発期間が5年程度であることを考えると30年にはEV市場争奪戦の大勢が決するだろう。それまで残り10年を切った。日本メーカーが欧米勢に追いつき、逆転するためのには、わずかの躊躇(ちゅうちょ)も命取りになる。

    (神崎修一・編集部)

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