まるでEVの祭典! 独ミュンヘン・モーターショー現地速報=中尾真二
欧州最大規模の自動車展示会、独ミュンヘン国際自動車ショー「ミュンヘンIAA MOBILTY 2021」が6日、開幕した。今年の東京モーターショーは新型コロナウイルスの感染拡大によって既に中止が決定しているが、ドイツでは例年のフランクフルトからミュンヘンに会場を移し、コロナ禍における主要モーターショーとしてはEU初の対面開催となった。
モビリティーや社会問題を意識して名称変更
EUでは政策によって脱炭素・カーボンニュートラルの動きが活発になり、車両の電動化が急速に進んでいる。EUの盟主ともいえるドイツで開催されるモーターショーも、その影響を大きく受けている。
まず、従来は「IAA(Internationale Automobil-Ausstellung:International Automobile Exhibition)」として開催されていたものが「IAA MOBLITY 2021」と名称を変更。名前が変わったのは、プロダクトメインの「見本市」から、モビリティーや社会問題をテーマとするイベントへと軸足を移していくという意思の表れでもある。
メルセデス、フォルクスワーゲン、ルノー、フォード…展示の目玉はほぼEV
主だった完成車メーカーは、軒並みEVを前面に押し出している。独メルセデスはEクラスのEVモデル「EQE」を発表。マイバッハのEVコンセプトやGクラスのEV(EQG)も参考展示している。フォルクスワーゲンは内装のみならず、ルーフやボディにまで再生素材を利用した「ID.LIFE」というコンセプトEVを発表。独BMWのコンセプトEV「iビジョン・サーキュラー(i Vision Circular)」、仏ルノーの「メガーヌE-Tech」、米フォードの「マスタング・マッハE」の高性能グレード「GT」――と、展示の目玉はほぼEVといっていい。
中国がじわじわとEUに浸透
中国はWEYが大きなブースを構え、ドイツ展開を目論んで「COFFEE」というハイブリッド車を展示していた。WEYはドイツ向けのプラグインハイブリッドを投入予定としている。中国勢で他の完成車メーカーの目立った出展はないが、取材する中で「L7e」や「M1」と呼ばれるカテゴリーの小型モビリティや、シティコミューターのマニュファクチャラーとして、中国メーカーがEUに浸透していることが確認できた。ドイツのベンチャーが車両を設計して製造を中国に委託するモデルを採用している。日本でも佐川急便のラストワンマイル用のトラックが同じビジネスモデルで作られている。
なお、ドイツでは「L7」と呼ばれるシティコミューターの規格が注目されている。ヨーロッパではすでに、トラックや乗用車の市内乗り入れ禁止などが進んでいる。代わりに注目されているのが、静かでゼロ・エミッションのEVだ。この市場では、クラウドファンディングを活用したベンチャー企業が目立つ。小型のためACによる普通充電が基本。この用途では交換式バッテリーを採用する企業も少なくない。
統合ECUやビークルOSに注力
コンチネンタル、ZF、ボッシュなどのティア1サプライヤー(1次部品メーカー)が注力するのは、統合ECU(IT機能を制御するコンピューター)やビークルOS(車載ソフト基盤)を意識したプラットフォームだ。コネクテッドカーや自動運転を見据えた、パワートレイン、ブレーキ、サスペンション、インフォテインメント(情報の提供と娯楽の提供を実現するシステム)コンポーネントに設計をシフトしている。
OTA(無線通信によるデータ送受信)のためのクラウドプラットフォームを用意するサプライヤーも増えている。トヨタやフォルクスワーゲンなど主要OEM(完成車メーカー)は、自社のクラウドプラットフォームを持っているが、そこまで投資ができないOEMは、ティア1が提供するECUプラットフォームやクラウドを活用するしかない。
IBMは自動運転AIをOEMに展開するビジネスを紹介
こうした動きは、既存ITベンダーにも見られた。IBMは、自動運転のAIやクラウドソリューションをOEMやサプライヤーに提供するビジネスを紹介していた。IBMはECUハードウェアやビークルOS、クラウドプラットフォームの間のアプリケーションやミドルウェア(中間的なシステム・ソフトウェア)、ツール開発、コンサルティングでCASE車両(コネクテッド<つながる車>、オートノマス<自動運転>、シェアリング<共有>、エレクトリック<電動化>を備えた車両)のビジネスに関わることを目指している。
ミュンヘンIAA MOBILTY 2021では、コンセプトEVや新型EVが目立つが、現地で出展ブースを取材してみると、自動車ビジネスの変化がたしかに感じられる。ミュンヘン市内を走る車は、まだまだ内燃機関搭載車が多い印象だが、各社の新車開発、ビジネスのメインストリームがEVにシフトしているのは間違いない。
文、写真=中尾真二・ITライター