大口径化で生産効率向上が進むパワー半導体、ドイツでは新工場が稼働=津村明宏
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大口径化進むパワー半導体 生産効率向上の動き強まる=津村明宏/55
パワー半導体の生産に大口径化の波が押し寄せている。現在主流のシリコンパワー半導体では300ミリ(12インチ)シリコンウエハーを用いた量産が本格化。次世代パワー半導体と期待されるSiC(シリコンカーバイド、炭化ケイ素)ではウエハー口径が150ミリ(6インチ)から200ミリ(8インチ)へ大型化しつつある。カーボンニュートラル実現に向け、省エネの切り札ともいえるパワー半導体で、大口径化による生産効率の向上とコスト低減がいよいよ本格化してきたという印象だ。
パワー半導体とは、主に電力を最適に制御するために用いられる半導体デバイスである。用途としては、バッテリーなどの電源を管理したり、モーターを省エネで回したり、発電した電気をロスなく家庭やオフィスまで運ぶことなどに使われている。具体的には、IGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)やパワーMOSFET(電界効果トランジスタ)、HVIC(高耐圧IC)などのデバイスがある。
これまでは口径の小さなウエハーを用いて精度よく、歩留まりを高く量産する技術に重きを置いてきたが、自動車の電動化にみるように、省エネ実現へパワー半導体の需要は右肩上がりが続いているため、近年はより口径の大きなウエハーを用いて生産能力の拡大や生産の効率化によるコスト低減を目指す動きが強まっている。
ちなみに、ウエハーの表面積は6インチと8インチでは1・78倍、8インチと12インチでは2・25倍も大きくなるため、同じサイズのチップを製造する場合、大口径ウエハーを用いたほうがウエハー1枚から取れるチップ数が増え、1チップ当たりの製造コストが劇的に下がる。大口径ウエハーを用いる製造技術をいち早く確立した半導体メーカーは、競合他社よりも圧倒的に優位なコスト競争力を確保できるのだ。
独企業の新工場が稼働
シリコンパワー半導体に関して、12インチウエハーを用いた量産では海外勢が先行してきた。なかでもトップを走るのが独インフィニオンテクノロジーズだ。同社は9月、オーストリアのフィラッハ工場で建設を進めていた12インチ新棟の稼働を開始した。フィラッハは独ドレスデン工場に次ぐ2カ所目の12インチ工場だ。今後4~5年で徐々にフィラッハ新棟の生産量を増やしていく予定で、これにより年間約20億ユーロの売り上げ増を見込…
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週刊エコノミスト
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