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月山富田城 難攻不落の山城に立つ

天守がなくても日本の名城

 安来平野を経て汽水湖、中海にそそぐ飯梨川が流れる広瀬町。「月山富田城」は、奥出雲の鉄生産地を支配下に治めた戦国大名・尼子氏の居城だった。

 戦国時代から江戸時代の初めまで、山陰の政治経済の中心地だったこの山城は、標高190mの月山に築かれた難攻不落の城で、敵対する戦国武将、毛利氏からの攻撃を受けても耐え抜いた天下の要塞だった。

 城主が移り変わり松江城が領国支配の拠点となって以降は一国一城令が発布されて廃城となったが、城跡には尼子家への忠義を貫いて戦った家臣、山中鹿介の銅像や供養塔、最後の城主・堀尾氏の墓、石垣や土塁が往時の面影を伝えている。

 見どころはなんといっても歴史を物語る石垣や土塁などの曲輪(くるわ)で当時のまま残されていること。天守がなくても城郭ファンには人気絶大で2006年には「日本の名城100選」「日本五大山城」に選ばれた。

鉄の流通路だった飯梨川

 山頂にたどりつくには中腹の城主の住居があったとされる山中御殿から「七曲り」という登山道を上らないと行けない。急峻な月山の山頂には本丸、二の丸、三の丸跡があり、ここからは鉄の流通路だった安来平野、中海、島根半島などの眺望が見渡せる。砂鉄が取れたという眼下の飯梨川もかつては川幅が広かったと聞くと月山富田城の繁栄ぶりと鉄生産との関係性がよくわかる。

 ここを訪れる際は山城のふもとにある「安来市立歴史資料館」に立ち寄って月山富田城のジオラマを見学していくとよい。3メートル四方の精巧な模型を見ているとこの山城が難攻不落といわれる理由がよくわかる。

 川の対岸にある広瀬町はかつての城下町で、尼子氏ゆかりの史跡や、名水百選「お茶の水井戸」の水を使った地酒「月山」の酒蔵・吉田酒造などがある。

安来市立歴史資料館

● 住所/島根県安来市広瀬町町帳752

● 営業時間/9:30~17:00

● 定休日/火曜日(祝日の場合は翌日)12月29日~1月3日

● 入館料/一般210円

● 電話番号/0854-32-2767

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