ソニーが世界をリードする高成長のCMOSイメージセンサー=津村明宏
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ソニーが世界をリードする CMOSイメージセンサー/57
「電子の目」と呼ばれるCMOSイメージセンサーは、数多くの半導体のなかでも、右肩上がりで市場規模の拡大が継続している稀有(けう)なデバイスだ。2021年の出荷数量も前年比10%増の80億個になったとみられ、引き続き成長を遂げた。5G(第5世代移動通信システム)モデルの出荷が増えたスマートフォンに加え、リモート環境の普及でモバイルカメラなどのPC周辺機器向けも好調だった。今後は自動車や監視カメラ、検査などの産業用途にも需要が増えていく見通しで、成長が止まりそうな気配はない。
このイメージセンサー市場で約5割の世界トップシェアを握るのがソニーグループだ。21年度(22年3月期)のイメージセンサーの売上高は前年度比10%増の9600億円を計画し、大台の1兆円突破が見えてきた。主力のスマホ用は、多眼化(1台当たりに搭載される個数)の一服や中国市場の低迷などで当初予想を下回る見込みだが、デジタルカメラ/産業用の想定以上の増加や大判化が寄与する見通し。25年度に世界シェア6割を目標に掲げており、20年に起きた米中摩擦に伴う中国ファーウェイへの出荷停止で一時抑制していた増産投資を再開している。
21~23年度を対象とした中期経営計画では、投融資1・5兆円のうち7000億円を半導体に投資する考え。21年4月に長崎テクノロジーセンター(長崎県諫早市)で稼働させた新工場「Fab5」に製造装置を順次導入して生産能力を高める計画に加え、台湾TSMCが熊本県に建設する予定の半導体ファウンドリー(受託生産)工場に5億ドル(約570億円)を出資し、協力関係を深めることを決めた。ソニーは以前から積層型イメージセンサーに不可欠なロジック半導体の生産をTSMCに委託してきたが、熊本新工場への出資で半導体不足のなかでも安定して調達できる体制を構築する。ちなみに、TSMC熊本新工場は24年末までに稼働する予定だ。
ローマ市で実証実験
加えて、近年ソニーが注力しているのが、写真や動画を撮影する「イメージング」用途だけでなく、自動車の自動運転や産業用の検査といった「センシング」用途にも利用の幅を広げ、単にデバイスを販売するだけでなく、サービスなどで安定的かつ長期的に収益を得るリカーリングビジネスを確立することだ。この実現に向けて、対象物との距離を正確に測…
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週刊エコノミスト
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