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経済・企業 後払い

今、知っておくべき後払い決済「BNPL」市場の急拡大=鈴木淳也

さまざまな事業者がBNPLのサービスに乗り出している
さまざまな事業者がBNPLのサービスに乗り出している

少額、簡単審査の「後払い」 コロナ禍で決済市場が急拡大=鈴木淳也

 「BNPL」と呼ばれる後払い決済サービスが急速に拡大している。消費者が利用する際の手続きがクレジットカード(クレカ)に比べて簡単なことなどが特徴で、新型コロナウイルスが世界的に感染拡大する中、EC(電子商取引)市場の興隆に合わせる形で利用が急増している。日本を含め世界の決済事業者が相次いで参入するほか、M&A(企業の合併・買収)も盛んで、各地で競争が激しくなっている。

 BNPLは「Buy Now, Pay Later」の頭文字を取ったもので、「後払い」を意味するが、クレカとは異なる決済手段として位置付けられる。BNPLはEC市場の拡大とともに、分割払いを提供する裏方的な存在として徐々に成長していたが、コロナ禍に突入した2020年に米アファーム、豪アフターペイ、スウェーデンのクラーナといった同分野大手が、取扱高やユーザー数を一気に倍増させ、大きな注目を集めることになった。

 さらに、20年8月に米ペイパルが参入すると、年末商戦での売り上げ増を見込んでメイシーズ、ギャップ、ニーマン・マーカスといった米小売り大手が相次いで導入。昨年7月には米アップルが米金融大手ゴールドマン・サックスと共同で自社決済サービスにBNPLを追加すると報じられたほか、翌8月には米スクエア(現ブロック)がアフターペイ買収を発表。EC大手の米アマゾンはアファームと提携し、自社サービス利用にBNPLを追加した。

 日本においてBNPLに相当する「後払い」市場に先鞭(せんべん)をつけたのは、ネットプロテクションズの「NP後払い」(02年3月サービス開始)とされており、持ち株会社のネットプロテクションズホールディングス(HD)は昨年12月、東証1部に上場した。また、14年7月から後払いサービスを始めたペイディは、ペイパルが昨年9月に27億ドル(約3000億円)で買収を発表するなど、日本でも活発に市場が動き出している。

カードとは別に与信

 クレカとBNPLの違いはいくつかある。クレカは収入など個人の信用力に応じて与信枠を設定し、その枠内で後払いを可能とする。海外ではリボ払いの利用が一般的で、毎月一定額を支払えば利子負担と引き換えに支払い期限を延ばせ、早期返済するほど利子負担を減らせる仕組みだ。翌月一括払いやボーナス払いが一般的な日本と異なり、借金をするための手段と認識されている。

 一方のBNPLの場合、与信審査はクレカに比べて簡単で、メールアドレスや電話番号などを入力するだけで利用を始めることができる。商品購入後に請求書が送られ、銀行振り込みなどで決済する。4回までの分割払いなら利子負担なく利用できるサービスが多い。利用枠(限度額)は最初は少額に設定され、利用状況に応じて引き上げられることが一般的だ(図1)。

 ここで重要なのは、クレカとは別に与信枠が設定される点だ。米国ではクレカの与信枠は信用調査機関のクレジットスコアによって決まるが、コロナ禍で収入が減少してスコアを下げられたり、若者のようにそもそもスコアが蓄積されていないケースでは満足な与信枠が与えられない。BNPLではクレカとは独立した形で与信枠を設定するため、こうした層がクレカの代わりにBNPLを選択するトレンドができた。

 金融情報サービス大手の米FISによれば、米国のEC決済市場におけるBNPLのシェアは、現在の2%から24年には4%まで拡大すると予測している。EC決済における多数派は依然としてクレカやデビットカードであることに変わりはない。ただしクレカ利用に抵抗があったり、何らかの理由で十分な与信枠を得られていなかったりする層は着実に増えており、それに伴ってシェアが急拡大しつつある。

「カゴ落ち」防ぐ狙い

 こうした世界のBNPLの動きを説明するのによく用いられているのが、IBISワールドが公開しているオーストラリア準備銀行のデータであり、同国におけるクレカ枚数は16年以降、減少傾向にある中、それに合わせる形でBNPLの取扱高は急上昇を始めている。少なくとも、クレカの客層を取り込みつつBNPLが拡大しているのは確かだ。

 既存の決済サービス大手業者は、BNPL市場に参入するだけでなく、地域ごとのシェア争奪戦も激しくなっている。例えば、スクエアが豪最大手のアフター…

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