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経済・企業 挑戦者2022

「非デスク現場」から紙をなくす=諸岡裕人・カミナシ代表

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 工場や店舗など、いまだに紙での作業が主体となっている現場業務のデジタル化に挑む。

(聞き手=白鳥達哉・編集部)

 工場の作業員やスーパーの従業員など、いわゆる“ノンデスクワーカー”と呼ばれる人たちが抱える作業をデジタル化するシステム、「カミナシ」を提供しています。(挑戦者2022)

 ノンデスクワーカーが日々行っている業務チェックや報告書などは、いまだに紙による作業がほとんどです。現場の管理者も膨大な書類を1枚ずつチェックしなければならず、記入ミスや確認ミスが多いのも日常でした。

 カミナシは、このような現場での作業を紙からタブレットのアプリに置き換えます。アプリには必要であると思われるいくつもの機能をひな型のパーツとして用意しています。それらを組み合わせていくだけで、現場ごとに最適化されたオリジナルのアプリとして使うことができます。

父の会社がアイデアに

報告内容に問題があれば通知もしてくれるので、作業時間が大幅に短縮される カミナシ提供
報告内容に問題があれば通知もしてくれるので、作業時間が大幅に短縮される カミナシ提供

 たとえば、何らかの作業で異常な状態を検出したものについてのみアラートを出したり、トラブルが起きた場合にどのように対処すべきかのマニュアルを表示したりすることができるので、確認作業にかかる時間やミスの発生を大きく抑えることができます。また、ノンデスクワーカーには海外出身の従事者も多いことを考慮し、海外言語への翻訳にも対応可能です。利用プランは機能に応じて3種類、初期費用は12万~30万円と可能な限り導入しやすい値段に設定しています。

 起業を目指すきっかけとなったのは父の存在です。父は32歳の時に航空関連事業のアウトソーシング(人材派遣)を行うワールドエンタープライズという会社を立ち上げています。身近にいる起業家の姿を見て育ってきた私も、大学を卒業する頃には会社を立ち上げたいと考えるようになりました。

 その後、父の会社で働くことになったのですが、従業員の9割以上がノンデスクワーカーという現場、そこで紙ばかりの非効率で大変な作業を経験することになります。当時はそこまで気にしていなかったのですが、自分の事業を興そうと考え始めた時に当時の大変な作業の記憶がよみがえり、これがデジタル化されたら皆喜んでくれるのではないかと思いついたのが創業のきっかけです。

 現在、導入企業は、ロイヤルホストホールディングスやルートインホテルズ、星野リゾートなど、150社になりました。

 今後は、導入企業を増やすのもそうですが、更なる機能の強化も考えています。その一つが、コア業務のデジタル化です。現在のカミナシは、コア業務の周りにある領域の問題をデジタル化する「広く浅い」ものです。しかし、導入する企業にとって本当にデジタル化したいのはコア業務の部分であることは間違いありません。

 実は起業当初に作ろうと思ったのは、コア業務の問題を解決するためのものでした。しかし当時は人材も開発力も乏しかったため、泣く泣く断念せざるを得ませんでした。

 ただ、今は開発チームの人材も増え、充実しています。一度は諦めたコア業務のデジタル化ですが、その夢を追いかけて再チャレンジし、さらなるノンデスクワーカーのデジタル化を推進していきたいです。


企業概要

事業内容:ノンデスクワーカーのための現場管理アプリの開発・提供

本社所在地:東京都千代田区

設立:2016年12月

資本金:4億9613万円

従業員数:36人(21年12月時点)


 ■人物略歴

もろおか・ひろと

 1984年千葉県生まれ。2009年慶応義塾大学経済学部卒業、リクルートスタッフィングや父の会社を経て、16年ユリシーズ(現カミナシ)を創業。37歳。

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