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タイの入国規制がほぼ撤廃 観光業の再開に期待高まる

新型コロナウイルス感染拡大の影響で閉鎖されていたパタヤ特別市はにぎわいを取り戻しつつある(外国人旅行者にも人気の海沿いにあるレストラン)
新型コロナウイルス感染拡大の影響で閉鎖されていたパタヤ特別市はにぎわいを取り戻しつつある(外国人旅行者にも人気の海沿いにあるレストラン)

 タイ政府は5月1日、新型コロナウイルスワクチンを接種した海外からの渡航者に対する隔離なしの入国制度「テスト・アンド・ゴー」を廃止した。

 入国時に義務づけていたPCR検査と隔離ホテルでの1日間の待機、滞在5日目の抗原検査を撤廃し、ワクチン接種済みの外国人旅行者がタイに入国する際の入国規制はほぼ撤廃されることとなった。また、入国する全ての外国人を対象に医療保険の補償額を2万㌦以上としていたが、1日からは同1万㌦以上に減額された。

外国人旅行者が戻り始めているスワンナプーム国際空港の到着ロビー
外国人旅行者が戻り始めているスワンナプーム国際空港の到着ロビー

昨年の外国人旅行者はコロナ前から9割減

 タイ観光・スポーツ省によると、2021年にタイを訪れた外国人旅行者は約43万人と、新型コロナウイルス拡大前の19年比で93%減少した(図)。

 だが、テスト・アンド・ゴーなどが追い風となり、タイ空港公社(AOT)の統計では、今年1~3月期にタイを訪れた外国人旅行者数は約150万人まで回復している。今後も規制緩和の動きを受け、外国人旅行者数は増加するとみられる。

 日本人にも有名なタイ南部のリゾート地、パタヤにある4つ星ホテル「セントラル・プライム・パタヤ」の従業員エグシリ・プラパソーン氏によると、新型コロナウイルスの流行が始まった20年3月以前は、月間の宿泊客が1万3000~1万4000人だったが、21年には年間で500人まで減少したという。

 プラパソーン氏は、5月1日からの事実上の開国について「いろんな国の人がパタヤを訪れてくれたらうれしい。コロナ以前は中国や韓国、日本からの宿泊者が多く、あの頃のにぎわいが早く戻ることを楽しみにしている」と話す。今のところ、予約はまだ増えていないが、「6月以降、夏にかけて旅行者が戻ってくることを期待している」と声を強めた。

首都バンコクのショッピングセンターでは日本からの旅行者の姿もみられた
首都バンコクのショッピングセンターでは日本からの旅行者の姿もみられた

ディカプリオ主演映画で人気高まったが問題も…

 新型コロナ禍以前のタイは、GDP(国内総生産)の約2割を観光業が占めるなど、世界有数の観光大国として多くの外国人旅行者を受け入れてきた。一方で、オーバーツーリズム(観光客の過度な集中)への懸念の声が高まっていた。弊害の一つが自然環境の破壊だ。

 タイ南部の西海岸沿いにあるクラビ県。その沖合、ピーピー諸島のピーピーレイ島にあるマヤ湾は、レオナルド・ディカプリオ主演の映画「ザ・ビーチ」(2000年公開)の舞台となって人気が高まった観光地だ。

 映画の影響もあってか、同地を訪れる外国人旅行者は急増したが、観光客が乗る観光ボートのいかりがサンゴ礁を傷つけるなどの問題が多発した。生態系への悪影響を回避すべく、行政側が18年6月から島を封鎖していた。

 今年1月には約3年ぶりに観光客の受け入れを再開。ただし、観光には事前予約が必要で、1日の受け入れ人数の上限は4125人、観光ボートの運航は1日に11便(約1時間の運行)となっている。また、マヤ湾での遊泳は原則禁止となっている。

多くのホテルではエレベーター内に感染予防の消毒ジェルが設置されている
多くのホテルではエレベーター内に感染予防の消毒ジェルが設置されている

 コロナ禍を契機に、限りある観光資源を生かした持続可能な観光へ転換できるか。観光大国タイの真価が問われている。

 斎藤信世(編集部)

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