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リアルとデジタルを融合した空間づくりで来客者に体験価値向上を提供 高橋貴志・丹青社社長

Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都港区の本社で
Interviewer 秋本裕子(本誌編集長) Photo 武市公孝:東京都港区の本社で

リアルとデジタル融合の空間創造 高橋貴志 丹青社社長

 Interviewer 秋本裕子(本誌編集長)

── 総合ディスプレー(装飾)業だそうですが、どういうことをする会社ですか。

高橋 戦後の1946年に創業し、49年に活気づく百貨店の内装を東京・上野で手掛けたことから本格的にスタートしました。日本経済の成長とともに、百貨店だけでなく、博物館、商業施設、文化施設へと業容を広げていきました。大きく飛躍したきっかけは、70年の大阪万博です。国内外合わせて116のパビリオンのうち、50館以上に関わりました。日本政府館では展示と内装を担当しました。大阪万博を通じて業界全体が拡大し、当社も成長しました。現在ではディスプレーの設計、施工、運営まで、自社で一貫して手掛けられることを強みとしています。(2022年の経営者)

── 対象はどういう施設ですか。

高橋 百貨店、アミューズメント施設、オフィスのほか、全国展開のチェーンストアや博物館などさまざまです。医療施設や健診センターもやります。国内12カ所に営業拠点を持ち、全国幅広い地域に展開しています。

 具体的な事例では、今年3月に閉幕したドバイ万博で日本館の展示・施工に参加しましたし、25年の関西・大阪万博にも取り組みます。また、最近の話題としては、昭和を代表するマンガ家たちが若手時代に暮らした木造2階建てのアパートを再現した「トキワ荘マンガミュージアム」(東京都豊島区)で、設計を担当しました。

── 新型コロナウイルス禍で打撃を受けたのではないですか。

高橋 全体的に、どの顧客もコロナ禍で事業計画の見直しや計画の中止を余儀なくされています。人が集まること自体が制限されたため、特にイベント関係では影響が大きくなっています。その一方で、外食チェーンは店内飲食から持ち帰りに業態を変更するなどして非常に伸びていますので、分野別で細かくみると、伸びたところとブレーキがかかったところの濃淡がある状況です。

 ただ、今期(2023年1月期)について言えば、新型コロナ感染者の拡大抑制を前提とし、さらにウクライナ問題の影響など不透明な要素を除けば、回復傾向になると予想しています。実際、21年後半から引き合いが増え、増加傾向にあります。今期の連結業績予想は、売上高は前期比11%増の700億円、最終(当期)利益は同25%増と、いずれもプラスに転じると見ています。

築古オフィス活性化

── 景気に左右されますね。

高橋 大きな影響を受けます。コロナ禍前は景気が右肩上がりで、当社の業績も伸びてきました。その頃は東京五輪への高い期待があり、訪日外国人客も政府の目標通りに増加していました。それがバタンと止まったことで、国内全体の消費に影響を与えました。当社も景気に左右されにくい体質にしようと、新たな取り組みをコロナ前から進めています。

── デジタルの活用ですね。

高橋 リアルとデジタルを融合した空間づくりの提供に力を入れています。ICT(情報通信技術)や演出技術といったテクノロジーを駆使して、空間価値を向上させるものです。17年に専門チームを創設し、デジタル活用に注力しています。巣ごもりで家にいる時間が長かったので、外に出る機会が増えた最近では、むしろリアルの体験を提供したいという需要が増えています。

── 企業からはどのようなニーズが出ているのですか。

高橋 例えば、eスポーツのイベントで、地域と地域をつなげたバーチャル空間を作り、その空間でライブ視聴できるようにしたほか、遠隔地からアバター(分身)で参加できるようにもしました。これからの5G(第5世代移動通信システム)、アフターコロナの新時代には、リアル空間との相乗効果が生まれると思います。

── デジタルの新事業による効果は?

高橋 22年1月期のデジタル活用関連の売り上げは118億円で、売上高全体(627億円)の18%でした。これを24年1月期に280億円とし、全体の35%程度まで引き上げる計画です。そのために、デジタル強化に向けた要員シフトも行っています。

── ディスプレー以外の事業にも取り組んでいます。

高橋 景気に左右されにくいよう、もう一つの事業として中小規模の築古オフィスの再活性化を21年5月から本格的に始めました。当社がオーナーからオフィスビルを取得し、リノベーションで価値を高めて稼働率を上げ、投資家に売却するビジネスです。場合によっては当社が保有を続けます。東京・日本橋など都心で3物件が進行中で、1件はすでに売却しました。当社は内装とインテリアで実績があります。不動産会社が行うリノベーションとは一線を画す価値を提供し、街のにぎわいづくりに貢献できればと思っています。

(構成=桑子かつ代・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスパーソンでしたか

A 秋田県の駅前の商業施設の担当をしました。地域再開発のはしりのような物件で、いろいろな経験を積みました。

Q 「好きな本」は

A 『木に学べ 法隆寺・薬師寺の美』(西岡常一著)です。木を熟知して建築物を作るという考え方が会社経営にもいえると感銘を受けました。

Q 休日の過ごし方

A 散策です。コロナ禍前は博物館や史料館巡りをよくしました。


事業内容:総合ディスプレー

本社所在地:東京都港区

設立:1949年10月

資本金:40億円

従業員数:1296人(2021年1月末、連結)

業績(22年1月期、連結)

 売上高:627億円

 営業利益:20億円


 ■人物略歴

高橋貴志(たかはし・たかし)

 1955年生まれ。東京都出身。74年東京都立工芸高校卒業。同年丹青社入社、99年執行役員、2010年取締役。取締役常務、取締役副社長を経て17年4月から現職。66歳。

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