国際・政治ワシントンDC

パンダ外交50周年に高まる反中世論=溝口健一郎

スミソニアンの人気者

パンダが映す米中関係=溝口健一郎

 今年5月、久しぶりにスミソニアン国立動物園に出掛けた。同園はワシントンDCの中心地から地下鉄で20分の距離にある入場無料の人気スポットだ。1889年に設立された米国最古級の動物園で、390種、2700点の動物を飼育している。住宅地に隣接しているとは思えないほど広々とした園内ではトラ、ゾウ、ゴリラなどを間近で見ることができるが、何といっても一番人気はジャイアントパンダだ。

 園内には現在、雌のメイシャン、雄のティアンティアン、2020年8月に生まれたシャオチージーの3頭のパンダがいる。スミソニアン動物園にパンダが来て4月で丸50年。現在、記念イベントを開催中で、筆者が訪問した日も、パンダエリアでは多くの家族連れが歓声を上げていた。母子パンダが並んで竹をバリバリと食べる様子を見られたのは幸運だった。

 半世紀前、パンダがワシントンに来たのは政治と無縁ではない。1972年2月にニクソン米大統領(当時)が電撃的に中国を訪問し、米中国交正常化に至る道筋を付けた際にパンダの譲渡も約束された。49年の中国の建国以来、パンダの密猟は厳しく規制され、国家間のプレゼントとしてのみ国境を越えるようになった。いわゆる「パンダ外交」である。

 米国への譲渡が実現するまでは、ソ連や北朝鮮といった社会主義国のみに贈られていたが、80年代には野生動物の保護を規制するワシントン条約を契機として、中国はパンダを譲渡ではなくレンタルすることとし、各国で生まれたパンダは繁殖年齢になると中国に返還することを義務付けている。

 当時、突然の米中関係改善にうろたえた日本だったが、72年に就任した田中角栄首相(当時)が迅速に対応し、同年9月に日中共同声明を発表した。日中国交正常…

残り589文字(全文1339文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事