テクノロジー EV・日本の大逆襲
《EV・日本の大逆襲》日本再参入の現代自動車が選んだ戦術とは★編集部も試乗しました!
韓国・現代自動車の日本再参入
現代自動車がユニークな手法で日本市場に再び挑む。
EVとオンラインで勝負シェアサービスで「体験」重視=編集部
韓国の大手自動車メーカー、現代自動車が今年2月、13年ぶりに日本市場に再参入した。扱うのは電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)、販売はオンラインのみという異例の展開だ。
現代は世界第5位の自動車メーカーで、欧米では高い人気を誇る。米国では昨年、傘下の起亜自動車を合わせ144万台を売り、販売台数で初めてホンダを上回った。一方、日本では2000年から乗用車を販売したが、顧客ニーズに合わず、09年12月に撤退。今回、再参入するのは、単一市場として世界3位の日本に再び成長機会を求めるためだ。
日本法人のヒョンデモビリティジャパン(横浜市)で陣頭指揮をとるのは、加藤成昭マネージングディレクター。かつてホンダの国内販売の責任者を務めた。日本は「市場が大きく、かつ、変化が激しいという魅力がある」と語る。
加藤氏は、他の先進国市場と違う日本の特徴として、(1)軽自動車が市場の4割を占める、(2)輸入車のシェアが1割に満たない、(3)EVのシェアが0.9%と非常に低い──点を挙げる。トヨタ自動車を頂点に国内メーカーが君臨し、独自の規格である軽自動車が幅を利かす典型的な「ガラパゴス市場」であり、外国メーカーにとっては、一見、難攻不落に見える。
だが、軽自動車のシェアが急増したように、脱酸素の流れと車のEV化をきっかけに、その壁が崩れる可能性があると見る。
ポイントは、日本の消費者の価値観の変化だ。再参入に当たって、グループインタビューを実施、その結果、「オンラインでの車の購入を98%の人が支持した」という。消費者の大半は営業マンとのやり取りを「ストレス」に感じていることが判明した。むしろディーラーを介さずに、メーカーが直接オンラインでやりとりしたほうが、顧客ニーズに応えられると考えた。顧客にはID番号が付与され、試乗、購入からアフターサービスまで24時間、オンラインや電話で対応する予定だ。
カーシェアで試乗
一方、日本は「購入するに際しては、試乗のニーズがすごく高い」。そのため、カーシェアリングの「エニカ」と提携し、試乗用の車を15台用意したほか、5月末まで東京・原宿駅前に実車を置いた体験型施設を開設した。
若い世代を中心に、車の「所有」より「利用」を重視する傾向が強まっていることにも注目した。大容量の電池を搭載するEVなら、キャンプ先でコーヒーを沸かしたり、ホットプレートで肉を焼くなど、新しい価値を提供できる。
主力車種となるEVの「アイオニック5」は、先行して発売した欧米では高い評価を得ている。容量58~73キロワット時のリチウムイオンバッテリーを搭載し、航続距離は498~618キロメートル。今年、世界的な自動車賞である「ワールド・カー・アワード」で最高賞を受賞した。価格は479万~589万円と欧米のライバルより安く設定している。編集部も試乗したが、室内空間は広く、内装は北欧家具風。大きなガラスルーフのおかげで室内は開放的だ。加速性能も十分だった。
購入後の車検やメンテナンスなどは、横浜、大阪、名古屋、福岡などの主要都市に直営のサービス拠点を置くほか、各県に一つずつ協力整備工場を置いて対応する。
加藤氏は、「今年は軽EVが出るなど、顧客の選択肢も増えている。日本のEV市場は来年、様変わりしているのでは」と期待を寄せる。
(編集部)