デジタル決済の世界最大級プラットフォーム 米フィンテックのペイパル=宮川淳子
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PayPal Holdings 脱現金、M&Aで事業拡大=宮川淳子/45
ペイパルは、デジタル決済(現金を使わない決済)の世界最大級のプラットフォームを運営する米国企業。ペイパルのプラットフォーム上では、取引や支払いに必要な情報をあらかじめ登録して一元的に管理することで、決済をワンタッチで済ませることができる。1950年代にクレジットカードが登場し、近年はスマートフォンの普及でさまざまな種類の電子マネーやQRコードが増え、デジタル決済は社会インフラになっている。今後は暗号資産(仮想通貨)や中央銀行デジタル通貨の発行増加も予想され、決済のキャッシュレス化の流れは勢いを増していることから、ペイパルの業績拡大を後押しする可能性がある。
デジタル決済の利用方法には、カードを使う方法(クレジットカード、デビットカード、プリペイドカードなど)と、スマートフォンを使う方法(QRコード、バーコード、電子マネーなど)がある。歴史が長く、利用額が比較的大きいクレジットカードは、依然としてデジタル決済の主流である。
しかし、お財布代わりとして少額でも使いやすいスマホのQRコードや電子マネーが普及し、スマホを使う方法は身近で日常的なものになっている。こうしたなか、ペイパルは約20年前に、ユーザーが決済情報を事前登録し、ペイパルが決済を仲介することで、個別サイトでの登録が不要で安全性も確保しやすいサービスを始めた。個人ユーザーであれば買い物代金の支払いや送金の「Venmo」、ビジネスユーザーであれば顧客への請求や代金回収の「PayPal」を使い、その取引の内容や金額に応じた手数料をペイパルは得る。仮にオンラインショッピングでトラブルがあっても、買い手保護制度によって個人ユーザーは補償を受けられる。ペイパルにとっては損失となるが、信用損失は決済総額の0.1%程度にとどまっている。
Z世代が成長をけん引
ペイパルの成長のけん引役はZ世代(90年代半ばから2000年代半ばに生まれた世代)だ。Z世代は、①インターネット環境で育ち、スマホを使いこなしている、②貯蓄や資産運用に興味があり、金融サービスの利便性に関心が高い、③買い物はクーポン検索後にオンラインで行うなど、デジタル決済になじみやすいなどの特徴がある。
Venmoの国内送金手数料は無料だ。また、手数料のかかかる国際送金サービスや銀行口座への即時送金サービスでも、競合する銀行より料率を低く設定しユーザーを増やしてきた。その一方で、暗号資産については、20年から決済機能を追加し、デジタル資産に抵抗の少ないZ世代のような個人ユーザーを有料サービスに誘導する施策も行っている。
M&Aや自社株買い
21年1~12月期の決済総額(TPV)は1兆2500億ドル(約168兆円)、同期末のアクティブユーザー(過去1年間にサービスを利用した人)数は4億2600万にのぼり、それぞれ前年比33%と13%増加した。TPVの伸びは、ユーザー数だけでなく、利用回数や決済金額にも依存する。たとえば、22年3~6月期のユーザー数は前年比6%増だが、ユーザー当たりの利用…
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週刊エコノミスト
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