電気代も保険料も人件費もアップ 迫るマンション管理費の値上げ 日下部理絵
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物価高の今、マンションでは管理費の値上げラッシュが始まりそうだ。自分が住む管理組合の管理費会計・修繕積立金会計の収支状況をチェックしよう。
収支見えにくい管理組合の赤字
食料品から光熱費まで、世界各国で深刻化する物価高。区分所有者にとって、毎月の「固定費」となる管理費も値上がれば、家計に大打撃を与えかねない。
「マンションの管理費等」といえば、管理費と修繕積立金の総称だが、一般的に「管理費」は消費税増税や大幅な仕様変更などを除き値上げ機会は少ない。管理費と一緒くたにされがちであるが、段階的に値上げされるのは、大規模修繕工事などに使われる修繕積立金の方だ。
管理費はマンション全体の維持管理に要する経費に使われる。具体的には共用部分の電気代、組合活動などで使う通信費やその他事務費、管理員の人件費、清掃費やごみ処理費、共用部分などの火災保険料や地震保険料などだ。
続く電気料金値上げ
そんな管理費だが、昨今、値上げの引き金になりそうな経費(支出)の一つが電気代だ。
コロナ禍からの景気回復やロシアのウクライナ侵攻で世界的にエネルギー資源が高騰している。発電量の8割程度を火力発電が占める日本の電力会社では、円安も加わって燃料費が増加している。
日本の電気料金は「燃料費調整制度」で計算されており、燃料価格が高くなると、併せて電気料金も上がる仕組みだ。こうして、私たちが払う電気料金は高くなる。
マンションの共用部分は、エレベーターのほか、上階に水をくみ上げる給水ポンプ、機械式駐車場からエントランスや中庭の照明まで、さまざまな場所で電気使用が必要だ。契約する電力量も40アンペアなど戸建てより大きい。
実際、埼玉県にあるファミリー向けの分譲マンション(48戸、機械式駐車場26台)の共用部分での月額の平均電気料金を見ると、21年5~8月に約9万円だったのが、22年5~8月では約10万8000円と1.2倍に上昇している。
他の経費も、注意文など掲示に使うコピー用紙や文房具類、共用部分の蛍光灯や電球類、洗剤類などが値上がりし“チリツモ”だが、管理費会計にじわりじわりと影響が出始めているマンションが多い。
黒字に見えても…
また、管理組合の会計は、必ず総会で承認された予算に基づき支出される「予算準拠主義」。表現は悪いが“毎年収支トントン”というのが美しい姿で、収支状況の悪化は見えづらく注意が必要だ。
都内分譲マンションの理事長Aさんはこう話す。「先日、管理会社の担当者から、管理費の値上げを提案され、驚いた。『黒字に見えるが』と言ったら『今は黒字ですがそれは余剰金に食い込んでいて、単年度は赤字です…
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週刊エコノミスト
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