DRAM需要が減速し市況は急速に悪化 津村明宏
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淘汰を経て上位3社で競合状況が安定してきたDRAM。最先端品の開発が進む一方で、需要減退で市況の先行きは不透明になっている。
トップ3社のうち2社は投資減額を表明/67
DRAM(ディーラム)は読み出し/書き込みが自由に行える半導体メモリーで、Dynamic Random Access Memoryの頭文字をとって、そう呼ばれる。電源を切ると記憶情報が失われる揮発性を特徴とし、主にパソコンなどの電子機器内部の作業記憶用に使われており、数ある半導体メモリーのなかで最大の市場規模を形成している。かつては世界中に数多くのDRAMメーカーが存在し、参入企業の多さなどから供給過剰によってたびたび値崩れを起こしていたが、現在はそうした淘汰(とうた)・再編を勝ち抜いてきた韓国のサムスン電子とSKハイニックス、米国のマイクロン・テクノロジーの3社で世界シェアの9割以上を占有するというかたちに参入企業が絞り込まれ、近年は比較的安定した市況下にあった。
しかし、ここにきてDRAMの市況が急速に悪化している。DRAMの需要先は、パソコンやスマートフォン(スマホ)といったモバイル機器向けと、データセンター(DC)などに多用されるサーバー向けの二つに大別できるが、コロナ禍で拡大した巣ごもり需要が縮小し、その反動でパソコンの販売が伸びていないこと、スマホ市場では中国を中心にアンドロイド端末の在庫が過剰になっていること、これに続いてDCの増設投資にもブレーキがかかり始めたことが、価格の下落と需要の減少を招いている。調査会社トレンドフォースの調べによると、2022年7~9月期の世界DRAM市場は前四半期比で30%近い減少となった。これは08年のリーマン・ショック時に次ぐ2番目の下落幅だという。
DRAMの価格競争力の源泉は、製造プロセスの微細化技術にある。他社よりも早く細い線幅の回路を作り込めるようになれば、シリコンウエハー1枚当たりから取れるDRAMの数が増え、1個当たりの製造コストを低減できるからだ。先端3社のDRAM製造プロセスは、10ナノメートル台に突入して以降、1X、1Y、1Zと世代が進み、これに続いて1α(アルファ)、1β(ベータ)が最先端となっている。回路線幅の数値は先端3社で微妙に異なっているといわれており、韓国2社の1α世代とマイクロンの1β世代がほぼ同等の製造プロセス技術だとさ…
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週刊エコノミスト
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