国際・政治 FOCUS
ボルソナロ前大統領支持者のブラジル議会襲撃 政党乱立で分断懸念続く 西浜徹
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ブラジルで1月8日に起きた、ジャイル・ボルソナロ前大統領の支持者らによる首都ブラジリアの連邦議会などへの襲撃という暴挙は、改めて同国の政治の分断を浮き彫りにした。1日にあった就任式を経て、左派のルラ・ダシルバ氏が12年ぶりに大統領への返り咲きを果たした熱も冷めやらぬ間だっただけに、その深刻さがうかがえる。
ここ数年の同国政界はルラ氏をはじめ多くの政治家が汚職疑惑にさらされてきた。国民に既存政治家への忌避感が強まる中、汚職と無縁だった右派のボルソナロ氏が2018年大統領選で勝利した。
ただしボルソナロ氏は、その奔放な言動から「ブラジルのトランプ」と揶揄(やゆ)され、政治手法を巡っても、トランプ前米大統領に倣う形で二元論を駆使してルラ氏ら既存政治家との対立をあおる動きをみせてきた。さらに、自身の支持層である軍関係者や農牧畜従事者、キリスト教福音派に代表される保守層を強く意識した政策運営で彼らから熱狂的支持を集めることに成功した。
そんな前政権を経た22年の大統領選は、ルラ氏との間で壮絶な選挙戦となった。ルラ氏は過去の大統領在任時、低所得者向けの手厚い給付などを実施したことで低所得者層に根強い人気を有する。選挙戦では両陣営がSNS(ネット交流サービス)を通じた偽情報(フェイクニュース)も交え、泥仕合の様相を呈する展開さえみられた。決選投票の末、ルラ氏が僅差でボルソナロ氏に勝利した。
しかしボルソナロ氏は選挙前から、選挙で導入される電子投票を巡って不正を主張。選挙後も自身の敗北を認めない姿勢を示した。開票結果に対する異議申し立ても実施。ただし昨年末、裁判所は申し立てを却下し、司法手続きで結果を覆すことは不可能となった。
インフレ顕在化
他方、足元の同国では食料品やエネルギーなど生活必…
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週刊エコノミスト
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