教養・歴史書評

オスとメスは緩やかな連続体 新たな知見もたらす新書 荻上チキ

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 世界に対する見方が大きく変わる一冊を読んだ。『オスとは何で、メスとは何か? 「性スペクトラム」という最前線』(諸橋憲一郎著、NHK出版新書、1045円)。本書は、生物学の知見を基に、性別についての新しい視座を提供してくれている。

 地球上には、さまざまな動物がいる。中には、雌雄の特徴やあり方がユニークな生物も多い。異なる繁殖戦略を持つ3種類のオスがいる〈エリマキシギ〉や〈ブルーギル〉などを見ると、生物を「オス」と「メス」の2種類にのみ分類するのは、少なくとも現実の生物像に即していないといえそうだ。

 いろんな生物の事例を読むだけでもワクワクするが、こうした生物の様相を紹介しながら、「性スペクトラム」という概念を紹介する。スペクトラムとは、何かを切れ目のある2極として位置付けるのではなく、緩やかに連続したものだと捉える概念だ。性別もまた、「オス」「メス」という、わかりやすく切れ目のある2対が存在するのではなく、幅広い形が存在しているということになる。

 人間も、性のあり方は固定的ではない。生まれた時、思春期、成人後、壮年後など、人は時期によって「メス化」したり「オス化」したりもする。また、そのあり方は個体差が大きく、「メスならこう」「オスならこう」などと定義することは難しい。

 けれどもこの社会は、ひとまず「オスとメスという2種類ということにしておこう」と位置付けてやってきた。本書は、それがいかに「不自然」であるかを突きつけ、その上で人間理解を深めていこうと促す。なんて好奇心のくすぐられる本だろう。

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 恋の話とか、お金の話とか、家族の話とか。それぞれのストーリーがある話題はさまざまであるが、「便」の話もまた、それぞれの事情や物語があろう。かくいう私も胃腸が弱くて軟便で(省略)。

『ウンコの教室 環境と社会の未来を考える』(湯澤規子著、ちくまプリマー新書、924円)は、主…

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