経済制裁で化学肥料高騰 注目の対抗策は“下水汚泥”にあり 山口亮子
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ウクライナ侵攻がダメ押しした肥料高騰は「食の安全保障」を大きく揺るがす。国内にある「汚泥肥料」の活用を進めるべきだ。
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「2008年と同じ」。化学肥料の高騰について、農業関係者は異口同音に吐露する。世界的な食料需要の高まり、原料確保のための旺盛な買い付け、中国による実質的な禁輸措置――。現在、肥料価格をほとんど“全面高”と言っていい状況に至らしめた要因だ。同時に、08年の世界的肥料高騰と全く同じ要因でもある。
さらには、値上がりする化学肥料を減らし、家畜ふん由来の堆肥(たいひ)といった国内の資源を活用するという対策方法まで、当時と共通している。現在の危機は過去の再来で、原料を輸入に頼る現状を変えなければ、いずれまた起きる。
世界には肥料価格を押し上げる要因がたいへん多い。穀物価格の上昇を見て、穀物を増産する地域が増えた。さらに肥料の輸出国である中国が内需を優先すべく、21年10月から輸出を制限した。同じく輸出国であるロシア、ベラルーシに対するウクライナ侵攻に伴う経済制裁と、ロシアによる輸出規制、天然ガス値上がりで、全体の相場がさらに上がった。国内の肥料の物価指数は、円安の影響もあり、22年12月に前年同月比40.9%上昇した。
農林水産省がまとめた「化学肥料原料の輸入相手国、輸入量」のグラフを見れば、日本がいかに中国やロシア、ベラルーシなどの国々からの輸入に頼っているかが分かる(図)。
現在は高騰対策として、化学肥料から、国内で作られた堆肥をはじめとする「有機質資材」に置き換えが進む。ただし、有機質資材は使う作物に対して効くのに時間がかかり、季節や天候などに効果が左右され、使いこなすのが難しい。
下水処理で汚泥を肥料化
そんな中、国内の未利用資源を使い、かつ化学肥料並みに早く高い効果を出すと注目を浴びるのが「汚泥肥料」だ。し尿処理で生じる下…
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週刊エコノミスト
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