エネルギーインフラ工事の米クアンタ・サービシズは老朽設備更新で需要拡大 永井知美
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Quanta Services 高まる再エネ需要が追い風/69
米クアンタ・サービシズ(クアンタ)は電力会社の送配電網や変電施設、エネルギー企業の石油・天然ガス・パイプラインなどの設計・建設・修理・保守サービスなどを請け負う北米最大規模の特殊工事請負企業である。電気や石油・ガスなどを「運ぶ」ことを主目的とする地味な存在だが、脱炭素の流れで電力需要の増大が見込まれること、環境重視のバイデン政権が、米国内の電力網更新や再エネ発電を推進する姿勢を見せていることから、注目されている。
活発な企業買収
2022年1~9月期の部門別売上高比率は、送配電網、変電施設などの設計・建設等を行う電力インフラ事業が52%、太陽光や風力発電など再エネ発電施設の建設・保守等を行う再エネインフラ事業が22%、パイプラインの建設・保守等を行う地中インフラ事業が26%。主要顧客に全米最大の電力会社デューク・エナジー、再エネ分野で世界最大級のネクステラ・エナジー等を抱える。
クアンタは1997年、電力インフラ建設業を手掛けていたジョン・コルソン氏が4企業を統合する形で創業した。90年代の米国には5万社超の電気工事会社がひしめいていたが、同時期に多くの州で電力業界の規制緩和が進められ、コスト重視の姿勢を強めた多くの電力会社が、送配電網や変電施設の建設・保守サービスなどを外部委託するようになった。
クアンタは工事請負市場拡大の流れに乗り、企業買収も活用して事業を拡大した。創業以来、クアンタが買収した企業は200社超にのぼる。21年には、27億ドル(約3510億円)を投じて再エネ関連設備の建設を手掛ける米ブラットナー社を買収し、再エネ事業に本格参入している。
クアンタの業績はコロナ禍による顧客の投資先送りで一時落ち込んだが、21年から回復に転じ、22年1~9月期の連結決算は前年同期比40%増収、17%増益(営業利益ベース)と好調。ブラットナー社の買収で再エネインフラ事業が売上高は同2.7倍、営業利益は同2.2倍となったほか、主力の電力インフラ事業も、送配電網の更新や耐久化投資が旺盛で同21%増収、同13%増益と伸びた。
電力や石油・ガスの工事請負業界はある程度の資金力と技術があれば参入可能で、参入障壁は比較的低く価格競争も厳しい。その一方で、近年相次ぐハリケーンや山火事などによる被害で、エネルギー網の重要性が見直されている。顧客企業は価格だけでなく請負業者の技術、経験、財務基盤、業界における評価も一段と重視するようになった。どの指標も高水準にあるクアンタには有利に働いている。
北米のエネルギー・インフラ関連市場は、中長期的にも拡大が見込まれている。①米国の電力インフラは老朽化しており更新需要が期待されること、②脱炭素の流れの中でガソリン車から電気自動車への移行など電化が進み電力需要の増大が予想される…
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週刊エコノミスト
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