中古マンション 個人購入の先細りで価格下落の可能性 藤井和之
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日銀の異次元緩和で活況が続いてきた中古マンション市場に異変が起きている。法人の在庫増加で価格下落の可能性が出ている。
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「中古マンション市場が過熱している」という報道を見かける機会が多い。その根拠として挙がるのが、国土交通省が発表している「不動産価格指数(住宅)」のマンション(区分所有)の価格指数が長期的に上昇を続けていることだ。
南関東圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)のマンション(区分所有)の価格指数は10年近く上昇基調であり、アベノミクスが始まった2013年1月の99.6から、直近の22年10月時点では約1.8倍の179.5まで上昇した。確かに価格指数の面からは「中古マンション市場は過熱」と言えるだろう。
ただし、不動産価格指数(住宅)は、国交省が実施している不動産取引当事者へのアンケート調査により蓄積されたデータに基づいて推計された指数であり、住宅市場全体の価格の動きを示しているわけではない。取引が成立した物件の価格の推移を示しているということを理解しておく必要がある。
「過熱」という言葉からは、取引件数が増加している状況が想像される。ところが、不動産価格指数(住宅)の不動産取引件数を確認すると、南関東圏の中古マンション取引件数は、新型コロナウイルスのパンデミック(大流行)が発生した直後の20年を除き、19年度から横ばいになっている。
ピークを過ぎた個人取引
取引の内訳をより詳細に確認すると、市場の変化がみられる。図では、不動産価格指数(住宅)から作成した南関東圏の取引主体別の累積取引件数について、19年度比推移を示している。21年度の中旬以降、「個人→個人」「法人→個人」の取引件数は19年度を下回っているのに対し、「個人→法人」「法人→法人」の取引件数は19年度を10~20%上回って推移していることが分かる。
つまり、21年度中旬以降の中古マンションの取引件数は、個人による取引件数の減少を法人による取引件数が補っているのが現状だ。物件を取得した法人の多くは、最終的に個人への売却を出口としている。しかし、図が示すように個人市場はピークを過ぎている。
日銀の異次元緩和による金利低下は中古マンション価格を後押しし、上昇が継続してきた。だが、新たな短期要因として、個人需要の減少と価格上昇による割高感、法人の在庫増加が加わった。特に投資用マ…
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週刊エコノミスト
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