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資源・エネルギー エコノミストリポート

再エネ有効活用で電力改革を再検討すべきだ 山下幸恵

再生可能エネルギーをもっと活用すれば、電気料金は下げられる(北九州市響灘の風力発電)
再生可能エネルギーをもっと活用すれば、電気料金は下げられる(北九州市響灘の風力発電)

 電力業界に重大不祥事が起きている。顧客獲得を自制し合っていた電力カルテル問題。アクセスできないはずの新電力の顧客情報が大手電力会社で閲覧可能だったという顧客閲覧問題。日本は20年以上も電力システム改革(電気事業制度改革、図)に取り組んできたが、改革の成果が十分に出ているとはいえない。背景には、大手電力会社に「電力市場は自分たちだけのもの」という意識が残っているのではないかと考えている。電力ビジネスは時代とともに姿を変えていく。市場規模18兆円とされる電力自由化市場を活性化させるために、もう一度、電力システム改革をやり直す必要があるのではないか。

 経済産業省と電力業界による電力システム改革は、2000年から段階的に進められている。電力小売り自由化については、まず00年に特別高圧部門(大規模工場、デパート、オフィスビル)が自由化され、04~05年には高圧部門(中小工場、小型ビルなど)が自由化。そして16年に最後に残されていた家庭部門が自由化され、電力小売市場は全面自由化された。その後、20年に電力システム改革、電力自由化の集大成として、電力会社の発電部門と送配電部門を分離する「発送電分離」が行われた。

ハワイの活用事例

 電気料金の高騰が大きな問題になっているが、筆者は電力システム改革をうまく進めることで、料金高騰対策に資する手法が導入できると考えている。その一つが、再生可能エネルギー(再エネ)の上手な活用だ。日本は設備容量だけならば、太陽光発電で世界3位など、再エネの規模は決して小さくはない。しかし、太陽光・風力発電は天候により出力が左右される変動性の再エネであり、電力需要を超えて発電する場合、一時的に出力を抑える「出力抑制」が実施されている。出力抑制は欧米でも実施されている一般的な方法だが、出力抑制自体を抑制できれば、再エネの活用拡大につながる。そうなれば発電用化石燃料の輸入を僅かでも減らすことにつながる。

 活用の一例として、米ハワイ州の取り組みを紹介したい。

 ハワイは島内の火力発電所で電力需要を賄っているが、燃料の調達コストが原因で、米国でも有数の電気料金の高い州になっている。この対策として、ハワイ州では太陽光発電の導入を加速し、二酸化炭素(CO₂)削減と電気料金低減を実現しようとしている。

 その対策の一つが、大手電力会社ハワイ電力の「Smart Export(スマート逆潮流)」という独自プログラムだ。これは家庭への太陽光発電設備と蓄電池設置を補助するものだが、注目すべきは、太陽光発電設備と蓄電池設置により、家庭で余剰になった電力の買い取り単価を、時間帯によって変えている点だ。

 余剰電力は、午前0時~午前9時、午後4時~午前0時の間はハワイ電力が有償で買い取るが、それ以外の時間は、同社が無償で引き取る。買い取り価格は島によって異なり、オアフ島は1キロワット時当たり14.97セント(日本円で約20円、表)。太陽光が多く発電する日中の余剰電力の買い取り価格は0円なので、日中に発電した電気を蓄電池にため、朝夕に使うことを促す。一般的な家庭は日中より朝夕に多くの電気を使うので、ためた電気を無駄なく使えると同時に、電力会社から買う電気が減り、電気料金抑制にも役立つ。

 日本ではかなり以前から、家電メーカーや大手電力会社が、日中の太陽光発電の余剰電力でお湯を沸かす高効率給湯機を販売している。余った電気をお湯に変えてためるという発想だ。これも余剰電力の活用方法の一つだ。そもそも電気でお湯を沸かす電気温水器は、原子力発電による電気が夜間に余るため、その使い道として…

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