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教養・歴史 学者が斬る・視点争点

Z世代社員を理解することは企業を変革させること 上原渉

オンラインを活用した働き方は、もう戻らない Bloomberg
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 人手不足解消には若手世代の離職抑制も大事だ。彼らへの理解は新しい組織作りのヒントになる。

DX化は世代を超えた組織改革・成果につながる

 人手不足の問題が深刻化している。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2023年1月)」によれば、正社員に関しては51.7%の企業が、非正社員に関しては31.0%の企業が人手不足を感じている。特に大企業の人手不足感は深刻で、62.1%と、過半数の企業が人手不足となっている。企業の成長と持続可能性に影響を及ぼす、喫緊の課題であるといえる。

 企業の人手不足は少子高齢化による労働力人口の減少はもとより、若手社員の離職率の高さも原因の一つだ。パーソル総合研究所の「働く10,000人の就業・成長定点調査」によれば、20代の転職意向は40%を超え(22年)、40代の21%と比べると、極めて高い比率となっている。昨今、賃上げの機運が高まっているが、若手社員の定着率を高めるためには待遇面だけでなく、彼、彼女らの価値観を十分に理解し、それに合った組織作り・組織変革が必要である。変革は、時代に合う、より魅力的な企業への近道ともなろう。

タイパ重視のZ世代

 10代から20代の若者は、Z世代と呼ばれている。スマートフォン(スマホ)やソーシャルメディアを使いこなすデジタルネーティブで、地球環境問題や社会問題に関心が高いといわれている。また倍速で動画を視聴する行動から、「タイパ」(タイムパフォーマンスの略、時間対効果)を重視する姿勢も指摘されている。

 ジェイソン・ドーシーとデニス・ヴィラによる著書『Z世代マーケティング』によれば、Z世代の1日のスマホ利用時間は、5~9時間が29%、10時間以上が26%となっている。寝ている時間や授業時間・就労時間を考慮すれば、起きている時間のほとんどはスマホを使っていることになる。インスタグラムやスナップチャット、TikTok(ティックトック)などの複数のソーシャルメディアを使い分け、人間関係のタイプによってコミュニケーション手段を変えている。特に親しい友人とはスマホの位置情報を共有し、お互いの現在地をリアルタイムで確認できるようにしており、上の世代(30代以上)とは明らかに異なる人間関係を作っている。

 マッチングアプリの利用も特徴的である。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの21年の調査では、3年以内の利用経験者は20代が28.9%、30代が16.6%、40代が6.8%だ。満足度も、若い世代の方が高く、「非常に満足」と「満足」を足した比率は20代で44.2%に上る。実際、筆者が学生に質問した限りでも、ここ5年間で利用経験者が増えているだけでなく、利用に対するネガティブなイメージも薄れてきている。マッチングアプリの利用増は、対面で人と出会う機会が減ったことだけが原因ではなく、相手の興味・関心を、時間をかけて確認するのが面倒であるという「タイパ」志向も背景にあると考えられる。

 一方、金銭感覚については堅実で、「若者の××離れ」という言葉で表されるように、かつての若者が興味・関心を持っていた自動車や酒、ブ…

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