ジュニアNISA 廃止決定で利便性向上 投資教育にも有用 高山一恵
今年末での廃止が決まっているジュニアNISAだが、今から始めても決して遅くはない。
現行のNISAには、18歳未満の未成年者が利用できる非課税投資制度としてジュニアNISAがある。通常、投資の運用益には20.315%の税金がかかるが、一般NISA、つみたてNISAと同様に、ジュニアNISA口座での運用益には税金がかからない。一方、ジュニアNISAは資産の払い出し制限があり、原則として18歳になるまでは払い出すことができない。この制限があることで利用率が伸びず、2020年度の税制改正により、「23年末」で廃止することが決まった。ジュニアNISAの新規買い付けも23年で終了し、24年以降は新規の投資はできなくなる。
しかし、皮肉なことに廃止が決定されたことで、ジュニアNISAの使い勝手が良くなり注目が集まっている(表1)。制度が廃止後の24年から払い出し制限がなくなり、23年末までにジュニアNISAで投資した資産は、18歳に達していなくてもいつでも引き出せるようになるからだ。
もっとも、23年末でジュニアNISAの投資可能期間が終わるからといって、すぐに資産を売却する必要はない。24年以降に非課税期間が終わったジュニアNISA口座の資産は、順次「継続管理勘定」というロールオーバー(NISAの非課税期間が終わった後、資産を新たな非課税投資枠に移すこと)専用の勘定に移して運用を続けることができる。
継続管理勘定では新規の投資はできないが、18歳になるまで(1月1日時点で18歳である年の前年12月31日まで)投資した商品を非課税で保有し続けることができる。ロールオーバー可能な金額に上限はなく、値上がりによって時価が80万円を超えている場合も、すべて継続管理勘定に移すことが可能だ。
なお、以前はジュニアNISAの資産をロールオーバーする際、毎年手続きが必要で、手続きを忘れると資産が課税口座(特定口座または一般口座)に移されてしまっていた。しかし、23年度の税制改正大綱で、ロールオーバーの手続きをしなくても自動的に継続管理勘定に資産が移されるようになる旨が盛り込まれ、特に作業の必要もなく18歳まで非課税で運用することができるようになる。
中学受験や贈与に利用
では、23年だけでもジュニアNISAを利用したほうがいいのだろうか。基本的には、現行の一般NISAもしくはつみたてNISAを利用し、その上で資金に十分な余裕があれば、ジュニアNISAを活用することを推奨したい。
もともとジュニアNISAは、大学入学時の教育費を準備する目的で作られたが、払い出し制限の撤廃により、中学受験や高校受験の教育費としての活用も可能になる。子どもの年齢が小さいほど、長い期間非課税で運用できるので、複利の効果を生かして堅実に増やすことが期待できる。ただし、資産を「一部だけ引き出す」ことはできず、一度にすべて払い出さなければならないことには注意が必要だ。資産を引き出すには、ジュニアNISA口座を廃止した上で引き出すことになる。
また、ジュニアNISAを祖父母から孫への贈与に利用するという方法もある。贈与税は、1人当たり年間110万円の基礎控除額以下であれば課税が免除される。ジュニアNISAで投資できる上限金額は年間80万円なので、贈与税の基礎控除額以下に収まる。
子どもと投資先を考える
ジュニアNISAを投資教育に使う方法もある。ジュニアNISAの口座は、子ども名義になるので、子どもも「自分ごと」化しやすい。筆者の顧客の中にもジュニアNISAを活用して投資教育を行っているケースは多い。
子どもの年齢にもよるが、小学校高学年程度であれば、投資する株式の銘柄を一緒に考える方法は有効だ。例えばゲームやアニメ、アミューズメントパークなど、子どもが興味を持っていることに関連する銘柄を選べば、子ども自身が自発的に株の仕組みや企業の理解を深めることができるようだ。また、よく行く店舗やお気に入りの商品など、子どもが身近に感じる銘柄から選ぶのもいいだろう。
筆者には11歳になる息子がいるが、実際にジュニアNISAで投資をする銘柄を一緒に選んでいる。本人の好物ということもあって、丸亀製麺を展開するトリドールホールディングスの株を買っている。店舗にもよく足を運ぶが、「新商品が人気だから売り上げが伸びそう」とか、「お客さんの人数が増えているから今後も期待できる」など、業績についても考えるようになったり、テレビの経済ニュースにも関心を持ったりするようになった。食事券の優待がもらえるのもうれしいようだ。銘柄によっては高額なものもあるが、ネット証券などを活用すれば1株からでも購入できるので、無理のない金額で始めるのがいいだろう。
選ぶ際のコツは、親があまり口出しをしないことだ。元本割れを気にするあまり、業績が良好な銘柄などに誘導したくなるが、失敗から学べることも多い。失敗の原因を子ども自身で振り返ることが大切だ。
一方で、倒産リスクがあるような高リスク銘柄への投資は避けたいので、最悪の事態にならない銘柄かどうか、最低限の業績は親がきちんと確認しておきたい。
(高山一恵・Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー)
週刊エコノミスト2023年4月4日号掲載
新NISA ジュニアNISA 廃止決定で利便性が向上 子どもの投資教育にも有用=高山一恵