米国がしかけるハイテク規制が中国のパワー半導体シェアを伸ばす恐れ 真家陽一
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「集積回路(IC)は現代産業の中核で、国家の安全保障と現代化プロセスに関わる。習近平国家主席はIC産業の発展を重視し、多くの重要な指示を出しており、徹底して実行しなければならない」。3月2日に北京で開催されたIC企業の座談会で劉鶴副首相(当時)はこう指摘した。
半導体の中で市場シェアが8割を超え、最も広範に使用されるデバイスであるICは、中国にとって最大の輸入品目だ。2022年の輸入額は4172億ドル(約56兆円、1ドル=約135円)と、ここ10年で2倍以上拡大。輸入総額に占める割合は15.4%に達した。
IC国産化は中国の悲願だが
輸入依存度の高いICの国産化を悲願とする中国は、さまざまな支援政策を講じてきた。例えば、国務院(内閣)は14年6月、「国家集積回路産業発展推進要綱」を公布。「国家集積回路産業投資基金」の設立を通じてIC産業を支援していく方針を掲げた。
基金は14年9月の第1期と19年10月の第2期を合わせて3429億元(約6兆5000億円、1元=約19円)に上る。この他、地方政府にも5兆円を超える基金が存在するとされており、合計12兆円弱の大規模投資が実施されてきた。
それでも、中国のIC自給率が低水準である背景には、中国企業の技術力不足に加え、米国の輸出・投資規制の影響もある。米政府は輸出管理規則(EAR)に基づき、安全保障上重大なリスクがあると認定した企業などをエンティティーリスト(EL)に掲載、米国製品の輸出を規制している。17年のトランプ政権の発足以降、EARは強化され、EL掲載により最先端の半導体関連製品の調達に支障を来す中国企業が続出した。
21年発足のバイデン政権は、規制の対象を個別企業から産業全般に拡大する姿勢を見せ、22年10月には先端半導体や関連製品および製造装置の対中輸出に許可申請を義務付け、申請した場合も原則不許可とする措置を打ち出した。
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週刊エコノミスト
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