経済・企業

65%がIT人材の賃上げに前向き 人手不足で「背に腹は代えられず」(編集部)

IT人材はインドが人気(東京都内の印刷会社)
IT人材はインドが人気(東京都内の印刷会社)

 IT(情報通信)人材を巡り、中小企業の間で、賃上げの動きが強まっている。ITコンサルティングや人材紹介を手掛ける全研本社が日本の中小企業の経営者を対象に実施したアンケート調査によると、IT人材について「賃上げを考えている」との回答が65%に達した。物価上昇に対し商品やサービスへの価格転嫁余力が小さい中小企業は大企業に比べて賃上げに消極的と見られているが、今回の調査からは、少なくとも不足しているIT人材については「背に腹は代えられない」姿が浮かび上がる。

 全研本社はインドのIT人材やインドネシアの介護人材などを日本企業に正社員として多く紹介している。調査は同社が中小企業の経営者を対象に2月24〜26日に実施し、200件の回答を得た。回答した企業の業種は建設、製造、卸売り・小売り、不動産、サービス、情報通信、金融・保険、宿泊など。

賃上げ10%以上が3割超

 アンケートでは「すでにいるIT人材の賃上げを考えているか」との質問に対して「考えている」との回答が65%を占めた(図1)。賃上げを考えていると回答した経営者に「賃上げの幅」を聞いたところ、前年比で「10%以上」との回答が30.8%と最も多かった(図2)。経済産業省によると、2030年には国内のIT人材が最大で79万人不足する見通し。人材不足が深刻さを増す中で、経営基盤の安定した中小企業がIT人材の賃金を大幅に引き上げる動きが出ているようだ。

 IT人材の賃上げ幅の回答で次に多かったのは前年比「2%以上〜4%未満」で28.2%だった。「4%以上〜6%未満」が15.4%、「0%超〜2%未満」が12.8%、「8%以上〜10%未満」が10.3%でそれに続いた。賃上げ幅は企業ごとに温度差があり、上げ幅が多い企業が人材の獲得競争に有利になる可能性もある。

 アンケートで「IT人材の採用の予定がある」と回答した経営者に対して、どのくらいの賃金を考えているかを聞いたところ、最も多かったのは年「300万円未満」で29.5%にのぼった。「400万円以上500万円未満」が17%、「500万円以上600万円未満」が15.5%でそれに続いた。「1000万円以上」は6.5%にとどまった。

人気IT人材はインド

「IT人材として外国人を採用する可能性がある」と回答した経営者に「どの国・地域から採用したいか」と質問したところ、IT大国として知られるインドが54.5%と断トツで多かった(複数回答)。アメリカが45.5%、ベトナムが40.9%でそれに続いた(図3)。新しく採用する外国人のIT人材に対してどのくらいの賃金を考えているかを聞いたところ、最も多かったのは「700万円以上800万円未満」で27.3%だった。「1000万円以上」の回答も18.2%と多く、日本企業が外国人のIT人材の能力に大きな期待をしていることが浮き彫りになった(図4)。

「社内にIT人材がいるか」との質問に対しては「いない」との回答が70%を占めた。一方で「いる」と答えたのは30%にとどまった。「自社のIT人材が不足していると思うか」との質問に対しては「はい」が37.5%、「どちらともいえない」が23%だった。「いいえ」との回答も39.5%あった。

「自社のIT人材が不足している」と回答した経営者に理由を聞いたところ、最も多かった回答は「社員をIT人材に育成することが難しいから」で58.7%(複数回答)にのぼった。続いて「IT人材が採用できないから」が46.7%、「国内のIT人材の絶対数が少ないから」が28%に達し、上位を占めた。「IT人材の離職数が多いから」との回答も10.7%あった(図5)。

(編集部)


週刊エコノミスト2023年4月11・18日合併号掲載

65%がIT人材の賃上げに前向き 人手不足で「背に腹は代えられず」=編集部

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