青色発光ダイオードの発明 中村修二「発明報酬が巨額でも企業はつぶれない」(2004年4月13日)
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週刊エコノミストは、各界の第一人者にロングインタビューを試みてきました。2004年から「ワイドインタビュー問答有用」、2021年10月からは「情熱人」にバトンタッチして、息長く続けています。中村修二さんは「問答有用」の第1回に登場しました。※記事中の肩書、年齢等は全て当時のままです。
ワイドインタビュー問答有用(2004年4月13日号掲載)
200億円判決の主役 中村 修二
200億円の衝撃――。青色発光ダイオードの特許を巡る裁判で1月に東京地裁が下した判決は、企業を震撼させ、研究者を驚喜させた。この裁判の主役、中村修二・カリフォルニア大学サンタバーバラ校教授に判決への評価を聞いた。(聞き手=小林剛・編集部)
青色発光ダイオードの発明
「勝ったんかな」
―― 法廷で三村量一裁判長が判決を読み上げたとき、どんな気持ちでしたか。
中村 勝ったか、負けたかよくわからなかったんですよ。ただ何となく凄い金額で勝ったのかもしれないとは思いましたが。裁判長の声が聞き取りにくかったし、法律用語は不得意なものですから。判決が終わって、升永英俊弁護士が「おめでとう」と握手してきたので、「はーん、勝ったんかな」という感じでした。200億円という金額も判決が終わって升永弁護士に言われて知りました。
請求額全額が認められるほどの判決になるとは思わなかったのでびっくりしました。(特許権に関する)中間判決(02年9月19日)のときは100%勝てると思っていたのに負けましたからね。中間判決では、「暗黙の了解」で発明者の私が会社に権利を譲った、と認定されたのですから愕然としました。1000億円単位の権利を暗黙の了解で渡してしまう人なんて世の中を探したっていませんよ。日本は法治国家とは言えないのではないかと思ったほどです。
中間判決では東京地裁は「発明は会社に帰属する」と原告・中村教授敗訴の判決を下した。だが、今年1月30日の発明の対価に関する判決は、対価を約604億円と算定、被告の日亜化学工業(徳島県阿南市)に対し200億円(原告の請求額)を中村教授に支払うことを命じる判決を下した。
―― 裁判長に対して不信感があった?
中村 裁判長というよりも日本の司法制度に対する不信ですね。私は、アメリカで日亜から企業の秘密漏洩の疑いで訴えられたので、日米の民事訴訟を知っていますが、アメリカと比べて日本の裁判は真実を求めるシ…
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週刊エコノミスト
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