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インバウンド消費の“急回復”は一時的? 斎藤太郎

 新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の段階的な緩和を受けて、インバウンド需要が急回復している。

 日本政府観光局(JNTO)によると、2023年3月の訪日外客数は181万7500人だった。コロナ前の19年同月比では34.2%減だが、2月の同43.4%減からは減少幅が大きく縮小した。

 国別では、米国、シンガポール、ベトナム、豪州はすでにコロナ前の水準を上回っている。コロナ前には全体の約3割を占めていた中国からの訪日外客数は19年同月比で11%の低水準にとどまっているが、水際対策は4月28日で終了したため、今後は中国からの訪日外客数も大幅に増える可能性が高い。

 訪日外客数以上に回復が顕著なのが、訪日外国人の旅行消費額だ。観光庁の「訪日外国人消費動向調査」によると、23年1~3月期の訪日外国人旅行消費額は1兆146億円で、19年同期比11.9%減だった。同期の訪日外国人旅行者数は同37.8%減で、これに比べて減少幅が小さいのは、1人当たり消費額が21.2万円と19年同期比で43.8%増の大幅増加となったためだ(図)。

 この傾向は、コロナ禍で一時中止されていた訪日外国人消費動向調査の調査・公表が再開された21年10~12月期から続いている。このため、政府が目標として掲げる年間5兆円のイン…

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週刊エコノミスト

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