時価上昇の暗号資産は脱ドルの受け皿になれるか 高城泰
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経済制裁を受けて脱ドル化を進めなければいけない国々では、代替の決済手段として、暗号資産の活用が検討されており、評価が高まっている。
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2023年の初め、3182億ドル(約41兆円)だったビットコインの時価総額は3月以降に急拡大し、4月には5890億ドル(約78兆円)へと2倍弱まで増加した。米金融機関が相次いで破綻し、既存の金融システムに対する不安が高まったことがビットコインへの再評価につながったようだ。
近年では米国株との連動性が目立ち「ナスダックコイン」と揶揄(やゆ)されたビットコインだが、法定通貨の信頼性が揺らいだ時に頼れる「デジタルゴールド」の性質も帯びている。銀行がバタバタと倒れるのを目の当たりにした時、米ドルに代わる「価値保存」の手段として物色の手が伸びたのは当然ともいえるだろう。
米ドルを代替する手段としてビットコインが意識される場面は昨年3月にもあった。ウクライナ侵攻に対する経済制裁により、ロシアが国際金融ネットワークから排除された時、米ドルの代わりに利用が活発化するのではとの思惑から買われたのがビットコインだった。
中央アフリカが法定通貨に
経済制裁により脱ドル化を進めざるを得ないロシアやイランでは、貿易決済の代替手段として暗号資産の利用が検討されている。貿易決済への暗号資産利用でリードしているのは中国だ。中国人民銀行はいち早くCBDC(中央銀行デジタル通貨)に着手し、昨年末時点で現金流通高の0.13%が紙幣や硬貨からデジタル人民元に置き換わっている。さらに昨年8月からはタイやアラブ首長国連邦(UAE)、香港も巻き込んだ国際決済の実証実験「mBridge」を開始するなど、日米欧に先行している。
脱ドルは意外なところでも進んでいる。北朝鮮のハッカー集団とされる「ラザルス」の標的は以前は米ドルだった。16年にバングラデシュ中…
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週刊エコノミスト
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