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教養・歴史 創刊100年特集~Archives

座談会 20世紀末を四大経済学者で解く~スミス、マルクス、ケインズ、シュンペーターが現在をみれば ②(1994年1月4日)

1990年代半ば、日本経済はバブル崩壊に苦しみ、世界経済は「社会主義崩壊後」の新秩序はどうなるかの問題に直面していた。混沌とした時代をスミス、マルクス、ケインズ、シュンペーターという経済学の巨頭ならどう考えたのか--。3人の経済学者が議論を交わした座談会を3回にわたって再録する。※記事中の肩書、年齢等は全て当時のままです。

座談会 バブルと社会主義崩壊 20世紀末を四大経済学者で解く

スミス、マルクス、ケインズ、シュンペーターが現在をみれば

 20世紀末、社会主義体制は崩壊し、先進資本主義国もバブル崩壊に苦しんでいる。経済学200年の英知はこれらを解明できるのか。スミス、マルクス、ケインズ、シュンペーターの学説の中から新しい経済学のあり方を探る。

大内秀明×水田洋×伊東光晴

(2)社会主義崩壊

-- 次に、社会主義国の変革に議論を移したい。

大内 ソ連・東欧の体制が崩壊し、マルクス・レーニン主義なるイデオロギーが破綻をしたことは現実だが、そこにマルクスの名前をかぶせられるのは、責任の一端はあるとしても、ソ連の体制はレーニンのロシア革命によってできたわけであって、マルクスはとっくに死んでいる。死んだあとの責任まで負えと言われても、ちょっと困る。

 たしかにマルクスの理論を一面で利用したことは事実だが、やはり遅れたロシアで工業化を推進しようとしたレーニンの工業化の限界が、ソ連の体制崩壊という形であらわれたと見ざるをえない。

“仮説”としての唯物史観

-- 利用されて、はなはだ不愉快であったと‥‥。

大内 レーニンはマルクス理論を、非常に公式的にドグマ化した。たとえば、唯物史観も、マルクスは、はっきり言った覚えはない。「唯物論的な歴史の見方」ということまでは言ったが、唯物史観などというキーワードでドグマ化したつもりはない。また、あくまでも唯物論的な歴史の見方も一つのイデオロギー的な仮説であって、考えている時に仮説としていろいろ言うことは誰でもやっていることだ。それだけのことなのに、仮説をすべて公式に当てはめて、仮説に当てはまらない現実は間違いであるかのように言えば、これはマルクスの責任と言うよりは、レーニンをはじめ後の「マルクス主義者」に問題がある。だから修正主義論争も起こった。

水田 レーニンがスミスの本を読んでくれたかどうかという問題になるが、おそらく、社会主義者あるいはアナキストも含めて、…

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