投資・運用 いまこそ始める日本株

インタビュー「欧州公爵家のノウハウで富裕層の資産保全」永倉義孝・LGTウェルスマネジメント信託会長

(本誌には掲載できなかった部分も加えてインタビュー全文を掲載しています)

 世界の富裕層はどう資産を形成・保全しているのか。欧州の大手プライベートバンクの日本法人責任者、永倉義孝・LGTウェルスマネジメント信託会長に聞いた。(聞き手=稲留正英・編集部)

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永倉義孝〈ながくら・よしたか〉LGTウェルスマネジメント信託会長 1973年神奈川県出身。三菱UFJ銀行、ドイツ銀行、クレディ・スイスなどで、プライベートバンキング業務に携わる。2020年から現職。

―― LGTとはどのような銀行か。

■当社は、リヒテンシュタインの国家元首で900年の歴史があるリヒテンシュタイン公爵家がオーナーだ。公爵家は元々、オーストリアのハプスブルク家に仕えていた有力貴族で、財務アドバイザーの立場で当時の神聖ローマ帝国の財務戦略などもアドバイスしていた資産管理に非常にたけたファミリーだった。それゆえに、他の伯爵家や男爵家からも資産を預かってほしいという要望が広がり、ビジネスが拡大、ワンオーナーのプライベートバンクとしては、世界最大になった。今でも当社の最大の顧客は公爵家だ。

―― どのようなサービスを提供するのか。

■日本で「長者三代」という言葉があるが、世界各地に全く同じ言葉がある。つまり、リッチなファミリーでも、3代目で資産がなくなるというのが世界共通の認識だ。

 ジョン・ワードというファミリービジネス研究の大家がいる。ロックフェラー財団のシニアアドバイザーをしている。それによると、資産を3代目まで継承できるのは13%で、4代目以降継承できるファミリーは全体の3%しかない。当社の仕事は、当社の顧客がその3%になるためのアドバイスをすることだ。

900年生き延びた一族

―― なぜ、それができるのか。

■リヒテンシュタイン家は、欧州において国家元首の立場で資産や血脈を900年間継承できた、ほぼ唯一のファミリーだ。ハプスブルク家に仕えていたので、元々はオーストリアのウィーンに本拠があり、今でも大きな宮殿を所有している。その間、フランス革命があったり、ナポレオンに占領されたり、非常に厳しい時代を生き残ったあとに、2度の大戦に見舞われた。第一次世界大戦の前までは、ドイツ・マルクが世界で最も安全な金融資産といわれていたが、敗戦国のドイツでハイパーインフレが起き、目の前でそれが紙切れになった。第二次世界大戦の前までは、チェコスロバキアに東京都の面積の10倍くらいの広大な不動産を所有していたが、戦後の共産化ですべて没収された。そうした凄惨(せいさん)な、非常に困難な歴史を経験するなか…

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