インタビュー「中小型株に超長期で投資」五十嵐和人・鎌倉投信資産運用部長
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鎌倉投信の五十嵐和人・資産運用部長によると、同社は運用を通じ、資産形成と社会貢献の両立を目指している。
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いからし・かずひと 1971年山形県生まれ。日系銀行、外資系生命保険会社、日系運用会社を通じて20年以上、日本株の投資運用に従事。
鎌倉投信の投資対象のすべてに共通するのは、本業で社会課題を解決しようとする企業であることだ。それらを「いい会社」と定義づけて投資を行う。投資先には三つの価値を見いだしている。一つは本業で社会課題を解決することからもたらされる「社会価値」。二つ目は、それを生み出す源泉としての「個性価値」。ここでは「人」「共生」「匠(たくみ)」に着目する。言い換えると、「人的資本」「関係資本」「知財・製造資本」のことだ。個性価値が社会価値を生んで、それが三つ目の「持続的価値」をもたらす。それぞれ関係性は図の通りだ。
個性価値とは、際だった個性を持つ企業のこと。当社の投資信託「結い 2101」が商品設計されたのは2010年。その後東日本大震災が発生し、為替が超円高で推移し、日本株は弱含みだった。分散投資を行っても消去することができない「システマチックリスク」を抑えるために、本業で社会課題を解決するという価値を生む会社が「アルファ(平均リターンに対する超過リターン)」を生み出すという前提で商品設計をした。
トヨタ自動車もモータリゼーションという社会課題の解決に貢献してきたが、同社のような巨大企業になると、自社の行動がマクロ経済全体に影響を及ぼし、他方でマクロの影響を強く受けるので、個性価値が見えにくくなってしまう。結果として、「結い 2101」は、中小型株が9割を占めるファンドとなっている。投資スタイルでいうと、成長株のほうがやや多い。また、内需株が多い構成になっている。
投資先がいい会社である限り投資し続けるので、結果的に超長期投資になる。複利効果を最大化する狙いもある。そのためにも、ドローダウン(保有資産の下落率)を抑えることが重要になる。株価が50%下がると、それを元の位置に戻すには100%上げる必要があるからだ。ドローダウンを小さくしておけば、その後の戻りの値幅も小さく済む。我々が求めるリターンは企業の成長に応じたものだ。おおむね企業の純資産成長率に沿って動いている。
リターン引き上げ議論
ファンドの顧客には、目標リターン4%と伝えている。信託報酬をいただくので、信託報酬控除後で4%のリターンを出すためには、加重平均で5%以上のROE(株主資本利益率)の集合体に投資していくことを目安にしてきた。
ただ、昨今のインフレ傾向を踏まえて、目標リターンを上げていくかどうかは社内で議論しているところだ。まだ決定したことはない。ただ、今後、「金利のある世界」に入ると、リスクフリーレート(国債利回りなどリスクが最小の金…
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週刊エコノミスト
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