投資・運用 いまこそ始める日本株

金利復活でも米利下げもあってJ-REITへの影響は限定的 関大介

首都圏では賃貸マンションの建設が相次いでいる
首都圏では賃貸マンションの建設が相次いでいる

 J-REIT市場では、日本の金利復活の影響を懸念する声もあるが、事情は異なるようだ。

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 株式市場は8月以降、乱高下が続いているが、9月10日時点で年初からの騰落率は日経平均株価の8.6%上昇に対し、J-REIT(Jリート)市場の代表的な指数である東証リート指数は1.9%下落となった。大半が国内不動産であるJリートは、株式市場のように円安恩恵を受けられないだけでなく日銀が利上げ姿勢を強める中で、金利上昇による悪影響を懸念する声もある。ただ米国の利下げもあり、影響は薄そうだ。

 Jリートは、賃貸用不動産を投資家からの資金及び借入金で取得し、不動産から生じる収益(賃貸収益や売却益)を投資家に分配する仕組み。リートは、投資家に利益の90%超を分配すれば法人税などが実質的に課税されない税制が適用される。そのため東京証券取引所に上場する58銘柄の平均利回りは、4.8%程度(9月10日時点)と比較的高い。

 前述の通りJリートは借入金があるため、日銀の利上げによる国内金利上昇は収益に対して悪影響を及ぼす。例えば、物流施設に投資する銘柄の中で時価総額が最大の日本プロロジスリート投資法人(NPR)は、2024年9月に期間5年の投資法人債(社債に相当)を発行するが、利率は0.88%となっている。NPRが同様に期間5年で22年6月に発行した投資法人債30億円の利率は0.30%で、0.5%以上金利が上昇している。

円高でも10%上昇期待

 しかし、Jリートの借入金の「中身」をみれば、投資家の懸念は過大ともいえる。大半の銘柄では、異次元緩和が続く中でも将来の金利上昇に備えて借入金の長期化や返済期限の分散、固定金利化を進めた。具体的には、Jリート全体で借入金は調達期間が7年を超え、年間の返済額は13%程度で90%が固定金利となっている。つまり1年単位でみれば、借入金の13%だけが借り換え時に金利上昇の影響を受けるに過ぎないため、収益に対する悪影響は限定的だ。前述したNPRの30億円の社債も、借入金や社債など有利子負債3363億円の1%以下に過ぎない。

 むしろ、Jリー…

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