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経済・企業 挑戦者2024

カブトムシで有機廃棄物を削減――石田陽佑さん

いしだ・ようすけ 1997年秋田県生まれ。中学2年で家出。以後、祖父母の元で生活。高校中退を経て、2017年青山学院大経済学部入学。18年ウェブ関連の会社を設立するも解散し、大学も中退。19年TOMUSHI設立。26歳。(撮影 武市公孝)
いしだ・ようすけ 1997年秋田県生まれ。中学2年で家出。以後、祖父母の元で生活。高校中退を経て、2017年青山学院大経済学部入学。18年ウェブ関連の会社を設立するも解散し、大学も中退。19年TOMUSHI設立。26歳。(撮影 武市公孝)

TOMUSHI代表取締役 石田陽佑

 カブトムシの活用で今年3月、環境省の「環境スタートアップ事業構想賞」を受賞した。(聞き手=和田肇・編集部)

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 カブトムシを用いた有機系廃棄物の削減事業のほか、カブトムシの研究、通信販売、昆虫専門情報サイトの運営などを行っています。有機廃棄物の削減は、主にキノコ栽培農家と連携して、当社の小さな処理設備を買い取り方式で設置してもらい、そこにキノコ栽培で出てくる廃棄物(菌床)とカブトムシを1トン当たり700匹ぐらい入れて、カブトムシのエサとして食べさせます。

 そのカブトムシの糞(ふん)とそこで繁殖して増えたカブトムシを当社が買い取り、糞は肥料、カブトムシは高騰する魚養殖のエサ(魚粉)の代替として販売します。キノコ栽培ではキノコ1キログラム出荷に対し3キログラムの有機廃棄物が出るといわれ、その処理は栽培農家や行政の大きな問題となっています。あるキノコ栽培事業者では年間約2000トンの有機廃棄物が出るそうです。

 当社のカブトムシを使った事業では、有機廃棄物を7割程度削減できます。現在、全国約30カ所(自治体補助事業含む)でそうした事業を行っており、年間売上高は約1億円、うち利益が8割以上というビジネスモデルを構築しています。

 当社のカブトムシは、いろいろな種類の有機系廃棄物に適するよう、“累代”という一般的な品種改良方法を用いて、約200~300種類の品種をそろえています。ペット用通信販売も含めれば、全部で十数万匹のカブトムシを保有したり、使ったりしています。

偶然だった繁殖成功

 私は秋田県の生まれで、青山学院大学経済学部1年の時にIT系の会社を設立したのですが、うまくいかず会社は解散しました。生活に窮して大学も1年で中退し、秋田に帰っていた時、好きだった「ヘラクレスオオカブト」(中南米に生息する世界最大の甲虫、愛好家に人気)を購入して繁殖させたところ、これがネットで売れて3カ月で200万円ほどを稼ぎました。

中南米に生息するヘラクレスオオカブト(TOMUSHI提供)
中南米に生息するヘラクレスオオカブト(TOMUSHI提供)

 これを機会に、兄と2人でカブトムシの繁殖・販売の会社を立ち上げ、飼育施設も建設しました。資金は祖父母が先祖伝来の土地を売却して得たお金と銀行の融資です。しかし、何十種類ものカブトムシを大量購入して繁殖を試みたのですが、なかなかうまくいきません。

 後で分かったのですが、ヘラクレスオオカブトの繁殖成功は偶然だったんです。害虫が大量発生してカブトムシが死んだりするなど失敗続きで、5000匹は死なせたでしょうか。資金はどんどん減っていく中、銀行と相談するうちに、キノコ栽培農家から廃棄物処理に困っているとの話を聞き、カブトムシを活用してみたらうまくいき、会社も軌道に乗り始めました。

 今後は、カブトムシ(幼虫)が持つ「カブトムシディフェンシン」(抗菌性ペプチド、抗がん剤や抗生物質用途に期待される)の研究に、当社も関わっていきたいと考えています。もう一つは海外展開。海外ではカブトムシはゴキブリと同様に見られており、日本のように愛好する風習はほとんどありません。カブトムシの可能性を世界に発信できればと思っています。


企業概要

事業内容:カブトムシの販売、資源リサイクル事業

本社所在地:秋田県大館市

設立:2019年6月

資本金:450万円

従業員数:10人


週刊エコノミスト2024年6月25日号掲載

石田陽佑 TOMUSHI代表取締役 カブトムシで有機廃棄物を削減

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